海戦前夜
レイラ視点。
レイラ視点
私は、ティアとリドリーを送り出すと、船団に霧に沿って進むよう指示した。
再び、何度もやり直してきた。時の波の意志が、再び強くなりつつあるのを感じる。
「新婚旅行に行っといて良かった」
こうなることを予測して、最初に彼と旅に出たのだ。やり直すたびに、彼との幸せな時間から始められる。
ステージクリアという言葉が正しいかはわからないが、難易度は確実に上がっている……。
悲劇の終わりを繰り返すたび、精神がすり減っていく。リセットポイントには、必ず楽しみが必要だと、心の中で思う。
しかし、時の波に流されない存在たちもいる。魔女たちだ。
彼女たちの能力によって、記憶の残り方に差があるようだが……。
魔女たちを満足させない限り、先へは進めない。待遇が悪化すると、つまらない妨害を仕掛けてくる。
「大森林の魔女は、やり過ぎだわ」
リドリーの父は、彼女が守護者であるため、当然のようにリドリーを手に入れようとしたが、氷雪の魔女の手がすでについていたので拗ねている。
「どれだけ搾り取るつもりなのかしら」
とはいえ、大魔女だからこそ、見極めて限界ぎりぎりまで報酬を取っていったが、私に敵対するつもりはないようなので、一安心だ。彼には申し訳ないが、美味しいお粥で許してもらおう。
最大の課題は共和国の内戦だ。
早く王国の兵を送り込み、鎮圧しなければならない。既に、ウエストグランには、セオの率いる王国騎士団を中心に兵を移動させてある。
だが、マリスフィア侯爵領を通過しなければ、目的地には辿り着けない。
共和国への道、西側のルートは、すべてマリスフィア侯爵の侯都セーヴァスを通る。交通の要所でもある。
無理に突破すれば、王国で内戦が勃発する。それでは最悪だ。
そしてタイミングよく、連合王国が攻めてくる。いや、あらかじめ、計画していたのが正しいだろう。
彼らも、又、セーヴァスの重要性を理解している。
島国で海軍力を持つ彼らに対抗するには、港湾都市に防衛陣地を築くべきだが、マリスフィア侯爵家が動かない状況だ。
となると、海戦しかない。どうやって……。
王国が直接持つ海軍の大型船舶は少ないが、セーヴァスには民間の大型船舶の護衛艦がいくつかある。
私は、最新鋭の船舶用大砲を急いで格安で譲渡した。
彼らは必ず購入するだろう。なぜなら、幽霊船が現れ、被害が出ているからだ。そして結果、その通りとなった。
何とか、数は集めた。この急ごしらえの艦隊で勝たなければならない。
リドリー達には、他のことを頼んでいる。
「それでも、必ず、勝利するわ」レイラは、微笑んだ。
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