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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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出航

 レイラたちは漁船用の桟橋に戻ってきた。


 コロサールの船は、軍船と間違えられるほどの装備を持っていた。船舶用の大砲まで積載されている。

「おいおい、漁船だよな?」


 俺は驚いて尋ねたが、レイラは知っていたのか、当然のような顔をしていた。


「ははは、凄いだろう! ネグロクサみたいな、海賊魂を捨てた奴らと一緒にされてもらっちゃ困るぜ! この大砲は最新鋭の軍艦と同じものだ。手に入れるのに苦労したぜ!」


 貴重な武器の納品先を、レイラは把握しているのだなと、俺は悟った。


「使えないと意味がないわ。砲撃手と砲弾はあるんでしょうね?」


 コロサールは黙り込んでしまった。痛いところを突かれたようだ。


「お待ちください! レイラ女王。王国海軍のクレオンです」


 馬に乗って颯爽と現れたのは、提督服を着た女だった。


「待ってたわ、クレオン。いてよかった。砲撃手と砲弾を貸してくれない?  それと、私は女王じゃないわ」


彼女は笑って、

「御意。手配致します。それと海に出るなら、我が軍船で」


馬を飛び降り、胸に手を当てて応じる。


「それはまずいわ。私のことは秘密にしてね。特にあなたの部下には、スパイがいる可能性が高いわ! だから、演習だと言ってついて来て! 一列で、臨戦体制でね」


「理解しました。軍神のご指示の通りに! それでは、さっそくご要望のものを届けます。戦いは、必ずや、満足の結果をご覧にいれます」


 そう言うと、嬉しそうに足早に去っていった。ここにも、彼女の信奉者がいた。


 やりとりを見て、コロサールはようやく自分がとんでもない事態に巻き込まれたのを理解したようだ。


「れ、レイラって、レイラ様なのか……し、失礼いたしました……」


「ふふふ、秘密だからね。コロ、それと怖がる必要はないわよ。ここには本物の軍神、リドリーがいるもの」


 そう言って、俺の腕にしがみついた。少し震えているのがわかった。


「任せておけ! お前を傷つけたりしない。だが、腹が減ったな」


 ティアが再び上空を旋回する。敵の接近を知らせる合図だった。


「レイラ、時間だ!」


「それで、行き先はどちらでしょうか?」


「小島の周辺よ。とりあえず、ゆっくり向かって」


 彼女は操舵室を出て、デッキに向かった。夕日が水平線の向こうへ沈んでいく。


 ゆっくりと、船がセーヴァス港を離れる。

 俺はレイラに尋ねた。


「なあ、なぜ船に乗るんだい?  ティアが寂しがってるぞ!」


「船に乗ることって、あんまりないから!」


「嘘だな! 最初からこの船に乗る予定だったんだろ?」


「もう、リドリーったら……」


 計算づくで動く彼女の行動に、無駄な動きがあるとは思えない。この船の存在を知っていた。そして……


 この船の跡を追うように、商船の護衛艦と、マリスフィア海軍の戦艦までもがついてきている。一列になり、見事な隊列を作る。


「これが、この港の最大勢力よ。敵はきっと、魔物と連合王国よ。魔物が先兵として来ると思うの。リドリー、お願いね!」


 彼女の声は冗談めかしていたが、その目は真剣だった。


「任せろ。……っと」


 俺は、ポケットに干し肉があるのを思い出して取り出し、軽く咥える。戦いの前に、少しでも腹に入れておくのは悪くない。


 レイラが呆れたように肩をすくめた。


「もう、余裕なんだから……」


 赤く染まる海の先は暗く、不穏な何者かの存在を窺わせた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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