レジーナのメイド
「はぁ……でも私では……」レジーナが自信なさげに呟いた。
「大丈夫よ、レジーナは私の世話を立派にこなしてるわ。」
レイラの言葉に、レジーナは少し驚きつつも嬉しそうに「やります」と任務を引き受けた。
すでに、ドラムが数人の手駒が城に潜り込ませており、その者達と連携を取りながら情報収集を行うことになる。
「それでは、早速、レジーナ様を城にお連れします。」
ドラムが低い声で言うと、レジーナは少し心配そうに視線を落としながら尋ねた。
「採用されるのでしょうか?」
「ははは、心配は無用ですよ」ドラムは軽く笑いながら肩をすくめ、部下に指示をした。「おい、手筈を整えろ!」
しばらくして、メイド服に着替えたレジーナが戻ってきた。しかし、その服は想像していたものとは少し違った。
レジーナが恥ずかしそうにスカートの裾を引っ張る。丈が短く、フリルのついた可愛らしいデザインだった。
「ドラム、これ……ちょっと短すぎませんか?」
レジーナが戸惑いながら尋ねると、ドラムは満足げに頷いた。
「いやいや、城の使用人に紛れ込むなら、それくらいがちょうどいいんですよ。目立たず、自然に溶け込むためにね」
「ふふっ、でも似合ってるわよ?」
「そ、そんなこと……!」
レイラが楽しそうに微笑みながら言うと、レジーナは恥ずかしそうにうつむいた。
「モルガン、もう出かけたのかしら……。モルガンにも確認してもらった方がいいのだけれど」
レイラの小さな呟きを聞いて、レジーナはさらに顔を真っ赤にした。
「探してこようか?」俺が親切に尋ねると、レジーナは弾かれたようにこちらを睨みつけた。
「い、いいです!絶対に!」
「……やめておこう」
ドラムとともにネグロクサ商会の馬車に乗り込み、そそくさと、セーヴァス城へ向けて出発していった。
「それじゃあ、私も港に行こうかな」
レイラが言うと、次に進む準備を整えたような格好で、動きやすそうにしていた。
「俺も行くぞ。それと、レイラ、腹が減った」
リドリーが、少しだけお腹をさすりながら言うと、レイラは微笑んで返す。
「じゃあ、港に行く途中で食べましょう。リドリーとデートね!」
小さな時からからかうのが好きで困る。
「歩いて行くか?」
「途中迄は、馬車で行きましょう」
「御者は俺がやろう」
彼女は、目立つ黒髪をまとめてスカーフに隠した。
港地区までは、坂道を降っていく。段々と塩の香りがする。
上空に、ティアが見えるが、俺達以外には雲が浮かんでいるようにしか見えないだろう。また、一段と大きくなっている。
「ティア、色々とありがとう!」
俺が右手を挙げると、ティアは、体を揺すって答えた。
俺達は港に着き、食事をする為に、酒場を探した。
なぜか、昼間なのに、どの店も客で溢れていた。
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