早い再会
「リドリー、全く何やってるのよ……!」
鋭い声が部屋に響き渡った。
その目には怒りだけでなく、何か深い思いがこもっているのがわかる。
「俺が悪いんじゃない。森の魔女が、やりすぎなんだ」
「石碑の文字も調べないで抜こうとしたって、ナッシュから聞いたわよ!」
「ちっ……」
舌打ちをし、窓の外に目をやる。昼下がりの陽光がセーヴァス湾を照らし、波間に金色の光が揺れている。外光の眩しさに、目を細めた。
「……それで、お前はどうしてここに?」
「手紙を届けに来たティアに乗せてもらったのよ」
彼女は少し肩をすくめながら、俺をじっと見つめていた。
「で、その女とはどんな話をしたの?」
「女……魔女だった」
俺は、魔女との会話の内容を簡潔に伝えた。レイラは黙って聞きながら、窓の外をじっと見つめている。その視線が、遠くの海に向けられているのがわかる。
「あそこに小さな島が見えるでしょ。だとしたら、あそこが、今回の発生源になるわ」
レイラの指差す先を追うと、遠くの海に小さな島影が揺れていた。霧がかかり、島の輪郭がぼんやりと浮かび上がっている。
「わかった……」
俺は力なく頷き起きあがろうとしたが、体は思うように動かない。無理に魔力を使って痛みを抑えようとするが、何かが足りない――魔力がほとんど残っていないのだ。
「……どうしたの?」
レイラがその変化に気づき、視線を俺に向けた。俺は息を吐きながら、できるだけ冷静を装って答える。
「いや、魔力がほとんど残ってないみたいだ……」
その言葉に、レイラは少し驚いた様子を見せたが、すぐにふっと笑みを浮かべる。
「ふうん。たまには、私の気持ちがわかって良いと思うわ」
その言葉に、どこか余裕を感じた。だが、その笑みの奥にはやはり気をもんでいる気配が見え隠れしている。
「でも、無理しないでね。体力回復しましょう」
「ああ、腹減ったな」
「なら、話は後にして、食事にしましょう!」
俺は立ち上がろうとして、ふらつき視界がぐらりと揺れる。
「ちょっと、大丈夫?」
「……何とかなる」
彼女は、レジーナが支えようと手を出すのを静止して、俺に「仕方ないなぁ。私が肩貸してあげようか?」レイラが優しく言った。
その瞬間、彼女の香りがふわりと漂い、思わず息を呑んだ。
「……悪いな」
俺は少し視線を外しながら、肩を貸してくれる彼女に感謝の気持ちを込めて答えた。
「無理しないで。私はここにいるからね」
彼女の声は、心にしみるように響いた。思わず胸が高鳴る。
「……ありがとう」
「ふふ、喜んでくれると嬉しいわ」
とても早い再会だった。
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