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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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魔物の森の中

 黒い雲が暗い夜空を静かに流れる。その中を、ティアが翼を広げて夜風を切り、上空を悠然と旋回していた。


 俺が手を挙げると、ティアはその動きに気づき、羽ばたきを強めて急降下する。月明かりが彼女の姿を鮮やかに浮かび上がらせた。


 地上に降り立ったティアの背には荷箱が積まれている。俺たちはそこから戦闘服を取り出し、素早く着替えて準備を整えた。


「モルガン、お前とレジーナでドラムからの依頼を遂行しろ。ナッシュとナナは、俺と一緒に動く」


「了解しました」


「またモルガンとですか……」


「なんだ、不満か?」


「別に不満というわけじゃありませんが……まあ、少し」


 レジーナの微妙に口を尖らせた表情は、明らかに照れ隠しだ。それに気づいたモルガンが笑みを浮かべて言った。


「心配するな、俺がしっかり守ってやる」


「だからそれが余計なんです! 余計なお世話!」


 そう言いながらも、レジーナの頬は赤く染まっている。それを見て、俺は内心で笑う。これでレイラに報告するネタがまた増えた。


俺たちはティアに乗り込み、月光に照らされた広大な魔物の森を眼下に見下ろした。


「遠くの山まで、森が続いていますね、兄様」


「ああ、だが森の中央には川や野原だけでなく、切り立った崖や大クレーターがある」


 俺は魔物の動向に気を配り、ナッシュは俺に頼まれた地図の作成に集中している。


「静かすぎますね」ナナが小さな声で言った。


「ティア、お前は何か感じるか?」


 ティアは翼を震わせ、周囲を探るように飛び方を変えた。


「……奴らは、こちらを恐れている」


 俺の問いに応えるように、ティアが小さく首を振る。


 森の中から微かな魔物の気配が数多く漂ってくるが、その気配はどれも身を隠そうとしているようだ。


 この二週間の闘いで、ティアはさらに成長した。その魔力は膨大に膨れ上がり、隠そうとしても、魔物には伝わるのだろう。


月光を浴びるティアの翼は、まるで薄い光のヴェールを纏っているようだった。それは美しくも圧倒的だった。


「まあ、数は多いのは面倒だが、溢れ出ても倒せないものではないな。だが、それだけじゃ無いな」下等な魔物が、騒がない筈がない。森が一つの意志を持っているかのようだ。


「……まるで罠みたいですね」ナナが小声で呟く。


「それなら、嵌るだけだ」俺は、魔物の森の中央にある、大きな砂の蟻地獄のような陥没らしき場所に降り立った。


もっとも、低い場所に、石碑が立っていた。


 だが、石碑には文字が記されているが、読めなかった。それは、レイラの書く秘密の言葉に似ていた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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