表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/251

冒険者ギルドにて 勝負


「全く、ヒモとは、失礼なやつだな」


 レジーナがここにいたら、不敬だと言って斬り殺していただろう。


 ゲームは単純だ。サイコロを二つ壺に投げ込み、蓋をする。奇数か偶数かを当てるだけだ。


 だが、サイコロに仕込んでいるのは間違いない。勝負の場面になれば、手先の器用さを活かして、目線を逸らした隙にすり替えるだろう。


 なぜ、俺がそれを知っているか? それは、レイラのせいだ。


 子供の頃、彼女から「半丁博打やるよ!」と意味もわからずに誘われ、ほとんど勝てたことがなかった。


 彼女がイカサマをしているのはわかっていたが、俺は一度も指摘しなかった。こいつらと違い、彼女は一生懸命、隠れてサイコロを手作りして、楽しそうだったからだ。


 だが、あの時の負けは、今日まとめて返してもらおう。


「この勝負、もちろんお前が受けるんだろうな?」


「ああ、金が本物ならな」


 大男がそう答えると、ほどなくしてギルド職員が慌ただしく戻ってきた。


「間違いなく、本物のドラゴニアコインです」


「ほらな。本物だって言っただろう。さっさと始めるぞ。ところで、負けた時に払えないなんてことはないよな?」


「当たり前だ。心配するな」


 そう言いつつも、大男――ガスターが本当にその額を持っているとは思えない。その余裕の裏には何かが隠れているに違いない。


「よかった。それじゃあ始めよう」


 壺振り役の男は、神経質そうにサイコロを握りしめている。その手は小刻みに震えていた。


「おい、お前、それで大丈夫なのか? 壺振りを変わってもらうか?」


 俺はわざとそう聞いた。揺さぶりをかけるためだ。もっとも、壺振りが変わると俺も少々困るが。


「しっかりしろ、トビー!」


 ガスターが苛立ちを隠せない様子で声を荒げる。


「は、はい!ガスター様!」


 トビーの返事は震えていた。額に滲む汗が、彼の動揺を如実に物語っている。


 俺は静かに魔力を巡らせながら、状況を冷静に見極める。


「さあ、始めようぜ」


 トビーの手が震えながらも、ついにサイコロを振り始めた。


 壺の中でサイコロが転がる音が静寂を切り裂く。部屋の空気が一瞬張り詰めた。


 全員の視線が壺に集中する中、勝負の幕が上がった――。



「あ! やっぱり、リドリー様いるよ、兄様!」


 ギルドホールに入ってきたのは、ナッシュ兄妹だけではない。彼らの後ろにモルガンとレジーナの姿もあった。


 俺の視線が、一瞬そちらに逸れる。それを見逃さず、トビーの指先がかすかに動いた。


「ま、まずいな……」


「何だ、やめるのか? それは許さんぞ!」


 ガスターが不機嫌そうに詰め寄る。


「止めるわけないだろう!」


 俺は平然と応じ、続けた。


「俺からでいいか?」




 




 


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ