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冒険者ギルドにて サイコロゲーム

「野営地で、各々情報収集してくれ!」


「わかりました!」全員が声を揃える。


「リドリー様、軍資金をもらわないと情報収集できません! ねえ、兄者」


「そうだな、お金がかかる。な、妹君」


「そんなものなのか?」俺は二人に金貨を渡そうと、財布から金貨を取り出し、手のひらに二枚載せた。


「そんな必要ありませんよ!」モルガンが言った瞬間、二人は金貨を掴むなり走り出した。


「まあ、大した金額じゃない。それじゃ、始めようか!」


 各々が情報収集のために動き出す。


「おじさん、この焼き鳥二つ!」


 タレと肉の香ばしい匂いが漂う屋台に、さっそく並んだ。


「あいよ、一つ銅貨二枚だ。ほら、これはおまけだよ」屋台の主人がにこやかに金貨を渡してくる。


「大きいね、兄者」

「美味しいね、妹君」


 ナッシュ兄妹は屋台の前の椅子に腰掛け、他の客と楽しそうに話しながら食事をしている。


 モルガンは、野営地の管理者らしき人物と、レジーナは荷馬車の商人達に話を聞いている。


 俺は彼らに任せ、ウエストグランの町を散策することにした。


 町は、大きな商店街と炭鉱労働者向けの飲み屋が並ぶ下町に分かれている。


 商店街では、荷物の上げ下ろしが忙しく行われていた。


「冒険者ギルドはどこだ?」


 そこは、飲み屋の一区画。酒場とギルドが一体になった場所だった。


 酒場には、朝から炭鉱労働者達が酒を飲み、賭け事をしている。簡単なサイコロのゲームだ。


 俺は、サイコロを振っている神経質そうな男の不自然な動きに気がついた。偶数か、奇数かを当てるゲームだ。


「おっ、偶数だ。また俺の勝ちだな!」腕っぷしの強そうな大男が大声で笑い、賭け金が彼の前に集まる。


「あー、またやられた。なんでまた偶数なんだ?」


 他の男達は、奇数に賭けたらしい。


 俺は近くの机に座り、静かに様子を見ていた。どうも、大きな賭けに出る時に限って、サイコロを振る男が変な動きをし、大男が勝つ。二人は目も合わせない。


「おい、サイコロを確かめさせろ!」ゲームに加わっていた冒険者が、神経質な男の手を掴んだ。


「何しやがる! 冒険者だからといって、横暴だな」男はサイコロを机に叩きつける。だが、既に入れ替わっているのが、俺には見えた。


「確認しやがれ!」冒険者は何度かサイコロを振ったが、怪しいところは見つからなかった。


「全く、俺は慈善でサイコロ振りやってんだぞ!」


「すまん」冒険者は、肩をすくめて謝った。


 異変に気づいたギルド職員や、他の机で酒を呑んでいた炭鉱労働者達がわらわらと集まって取り囲んだ。


「いや、謝罪は金だろう。百ゴールドは貰わんとな」大男が脅すように言う。


「ちょっといいか! 俺にひと勝負させてくれ! 時間がないんだ」思わず口を挟む。


「はあ、今、けちがついたところで、落とし前をつけてもらうところだ。店じまいだ」神経質な男が断ろうとする。


「じゃあ、俺が払う。だから、ひと勝負してくれ!」


「面白い。どれくらい掛けるんだ? 端金じゃあ、つまらんぞ」と大男は挑発的に言う。


「ああ、そうだな。千ゴールドでどうだ? 足りないか?」


 賭け事をしていたテーブルに座り、袋から財布を取り出すと、金を机にぶちまけた。


 からんからん、金貨がテーブルにばら撒かれる。


「ドラゴニア金貨は十ゴールドだから、百枚で足りるな」


 その場が一瞬静まり返った。


「贋金じゃないだろうな? 贋金だとお前首吊り刑だぞ! 確認しろ!」大男は、近くのギルド職員に金貨を手渡した。


「俺の女が、そんなケチな真似する訳ないだろう。早くやろう、怒られてしまうだろう」ナナ達に……


「何だ、お前、金持ち女のひもか?」大男は、俺を見下すようにニヤリと笑った。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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