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流刑島

 最果ての流刑地に送られる長い道中で、俺は十五歳になった。それは大人と認められる歳だ。


「あいつは今頃、みんなに祝われているんだろうな」


 そう思うと、ふつふつと苦い想いが込み上げてきた。


「全く、お前のせいで、いい迷惑だよ」


 流刑執行人の老人ティオスが、吐き捨てるように言った。


「悪いな」俺は少し同情した。


 ティオスの鋭い目は、その正体を語っていた。彼は無駄口を叩かず、淡々と仕事を進める一流の冒険者だろう。


 殺される覚悟もしたが、それなら最初から処刑されている。


「そうだ。これをやる」


 彼が、不意に俺へ手渡してきたのは、立派な短剣だった。


「なぜ?」


「お前、大人になったろう。代わりに祝ってやるよ」


 握った短剣には、少しの温もりがあった。



 そこは誰もいない、小さな氷の島だった。太陽が昇らない季節もある。


 ここは王国の飛び地で、極北の地だ。俺はいくつもの国を越え、ここまで連れてこられた。


 壊れかけの小屋が一つ、風に軋む音を立てていた。


「着いたぞ」


 ティオスが小舟から降りながら言った。


「ここで五年過ごすのが刑だ。だがその前にくたばるだろうな。最後に聞くぞ。王国に戻らないと約束すれば解放だ」


「悪いが、その約束はできない」


「口約束だ。破ればいいだけだろう?」


「そんな人間に見られたくない」


 老人は肩をすくめ、やれやれと呟いた。



 ティオスは、積んである食糧とリドリーの剣や持ち物を全て渡した。


「え? 貰っていいのか?」


「当たり前だ。生き抜くんだろう。それと、この島は、人はいないが魔物はいるからな」


「そうなのか……」


「そうだ、小屋を見てみよう。修理が必要かもしれん。真冬が迫っている」


 執行人は、ついて来いと、小屋に入ると説明を始めた。生活の術を。そして一泊していった。


「ああ。ありがとう、世話になった」リドリーは久しぶりに礼を言った。


「じゃあ、また来週来る、欲しいものがあれば教えてくれ」


「何だって? それではあんた、王国に帰れないじゃないか」


「ここらが俺の生まれ故郷でな。死ぬ時は、故郷に帰りたいものさ」


 老人が去ると、一人残された。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
冤罪で大変な事になっていますが、割と重めのお話なんでしょうか? ティオスが情けをかけてくれているのが救いですね。
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