冒険者パーティ
まだ暗い王宮の庭に、大きなドラゴン、ティアが大翼をたたんで静かに佇んでいた。
その瞳には優しい光が宿り、鼻先をそっと動かして、庭の花の香りを確かめているようだった。
「兄者、ドラゴンだ!かわいいよ!」
ナナがティアのそばに駆け寄り、恐れもせずその鱗に手を伸ばす。ティアは目を細めると、首を低くしてナナの手のひらに顔を寄せた。
その仕草は、まるで子どもに懐いた大きな犬のようだった。
「い、妹君、危ないよ!」
ナッシュは怯えた声を上げ、俺の背中に隠れる。その姿は危険を避けようとする小動物そのものだ。
「優しい子だよ」
俺はナッシュの肩を掴み、彼をティアの前へ押し出した。だが、ナッシュは腰を抜かし、体をくの字に曲げて叫ぶ。
「う、嘘だ! 近づけないよ!」
そのやりとりをよそに、モルガンとレジーナが庭に姿を見せた。二人ともいつもとは異なる軽装だ。
特にレジーナの姿には目を見張るものがあった。花柄のワンピースに髪をおさげにしたその姿は、昨日までの無骨な鎧からは想像もつかないほど新鮮だった。
「ほぉ」
思わず目を奪われ、見つめてしまう俺。レジーナは恥ずかしそうに目を伏せる。
「ドンッ!」
横腹を強く叩かれる痛みに息を呑む。
「何見てるのよ!」隣にいたレイラが、不機嫌そうに腕を組みながら睨みつけている。
「いや……」
弁解しようとする俺を遮るように、レジーナが小さな声で言った。
「村娘に、変装しております」
俺は改めて彼女を見た。確かに花柄のワンピースやおさげは村娘らしいが、纏っている雰囲気や魔力、さらには腰の立派な剣が、それを台無しにしている。
「村娘は無理があるぞ」
つい口に出すと、またもや横腹を強く叩かれる。
「リドリー、可愛いって言えないの?」
レイラが苛立ち混じりに問い詰めてくる。
「……ああ、可愛いな」
仕方なくそう答えると、レジーナは顔を真っ赤にしてさらに目を伏せた。
「ふぅん」
レイラは少し満足げだったが、どこか不満げな空気を漂わせている。
ふと、レジーナの服装や髪型に妙な違和感を覚えた。普段の彼女の好みなのだろ? 俺はやっと気づいた。
これ、全部レイラの指示じゃないか? 彼女のよくやる遊びだな、今回は露骨だな。
「それにしても、纏っている雰囲気と魔力がありすぎだ。それに剣もな」
俺はレジーナの腰を指差した。立派な剣が、どうしても変装を台無しにしている。
「それもそうね」
レイラは頷き、少し真剣な顔つきになった。
「でも、それならちょうどいいわ。もう手配してあるの。王都の冒険者ギルドにね。あなたたちには、これから冒険者パーティとして動いてもらうわ」
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