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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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選抜終了

 俺は、一斉に飛びかかってきた騎士たちの剣を、木刀で次々と弾き飛ばした。高く舞い上がった剣は、天を突き、やがて地面に落ちる。


「ギンッ!」

「シャキィンッ!」

「カランッ……」


 剣が地面に落ちる音が響き、騎士の中は慌てて新たな剣を引き抜き、再び俺に迫る者もいる。


「その意欲、いいぞ」


 俺は木刀を一閃し、迫りくる剣を弾き飛ばし、続けて一歩踏み込んで別の騎士に木刀を叩き込んだ。俺の動きに騎士たちの集中が乱れ、一瞬の隙間を生んだ。


「次、来い!」


その瞬間、鋭い風を切る音が耳に届く。弓矢だ――俺を狙い、逃げ場を塞ぐような軌道で飛んでくる。


「上手い!」


 咄嗟に魔力を込めた木刀を振り抜く。風を纏った一閃が、迫りくる矢をまとめて叩き落とす。


「すごい、風の剣だ、兄者!」

「ああ、飛び道具は効かない! 妹君」


 その会話を耳にした瞬間、王女近衛隊と暗殺ギルドの双子が同時に背後から迫る。


 王女近衛隊は巨大な盾を構え、押し潰すように前進してくる。その隊列は一糸乱れぬもの――まるで俺を大型魔物とでも見ているかのような構えだ。


「囲むな! 全速で突っ込め、隊列を乱すな!」


白鎧の女騎士が冷徹に号令を下す。


「どこまで耐えられるか、見せてもらおう!」


 俺は魔力を更に練り、木刀を振り抜いた。突風が巻き起こり、前線の盾兵たちを揺さぶる。


「わああっ!」


 盾を持った騎士たちは吹き飛ばされそうになるが、必死に耐えている。だが――


「いかん! 全軍、止まれ!」


 女騎士の迅速な判断が響く。


「いい判断だ。それに、お前たちの速さもなかなかだ!」


 俺は感心しながら木刀を肩に担ぎ、振り向く。そこには双子――ナッシュとナナが目の前に立っていた。驚きの表情を浮かべる二人の頭を、軽くぽんぽんと撫でる。


「よし、王女近衛隊も暗殺ギルドの双子も合格だ! 怪我をさせるわけにはいかんしな」


「全員ですか?」


白鎧の女騎士が尋ねる。


「ああ、全員だ。それと、お前達、名前は?」


「はっ、レイラ様近衛隊、隊長のレジーナです!」


「兄者はナッシュ!」


「妹の名前はナナ!」


「そうか、よろしくな」


「走っただけで試験受かったぞ! わーいわーい!」


 双子は、デグの元に走り去った。


 その時、モルガンが剣を手にして近づいてくる。


「よし、最後にモルガンとレジーナ、お前たち二人でかかってこい!」


「はい!」


「よろしくお願いします!」


 二人は一瞬目を合わせ、無言のうちに連携を図る意思を確認したようだ。レジーナは補助魔法の詠唱を始め、モルガンは魔法を剣に込めるつもりらしい。


「来い、全力でな!」俺が声を上げると、二人は同時に動き出した。


 モルガンは剣にまとわせた水魔法を冷気へと変えながら、一気に間合いを詰めてくる。一方、後方に控えるレジーナは冷静に補助魔法を展開し、モルガンの動きをさらに加速させる。


「ほう、連携がいいな!」


 俺は木刀で剣を受け流すが、剣にまとわりついた水の刃が残像を描きながら次々と襲いかかる。


「これで終わりです!」


 レジーナが力強く声を張り上げ、さらなる加速の魔法をかける。モルガンの動きは一段と鋭くなり、隙を与えない勢いで迫ってきた。


「その覚悟、気に入った!」


 俺は一息に木刀を振り抜き、風の衝撃をまとわせて反撃する。


 吹き飛ばされかけたモルガンは剣を地面に突き立ててなんとか踏みとどまる。


 木刀とモルガンの剣が、交わり、その衝撃に耐えきれず、同時に折れた。


「終了だ。見事だ。攻撃と補助、息が合ってるな。二人とも副騎士団長よろしく頼む!」


 モルガンとレジーナは肩で息をしながらも、互いに頷き合った。


「セオ、モルガン、俺と騎士たちの戦いを観ていただろう。騎士団は選抜してくれ」


「わかりました」


 こうして、俺の騎士選抜試験は幕を閉じた。


 その日の夜、レイラの屋敷にて


「全く、女性は全員合格とかどういうつもりなの?」


 レイラが怒り気味に声を上げ、眉間にしわを寄せた。


「いや、個人というより、組織力だったから……」


 気まずそうに弁解する。


「ふうん、まあいいわ。私が指導したのよ」


 レイラは得意げに言うと、ほんの少し胸を張る。その態度には確かな自信が宿っていた。


「そうなのか? なんでもできるんだな」


 素直な驚きを見せる彼に、レイラは小さく笑った。


「ローマ帝国の軍事戦術よ。効率と組織力を活かすのが鍵。古代の戦術は、今でも十分通用するわ」


「ローマ?」


 首を傾げる彼に、レイラは少しだけ説明を加えようか迷ったが、すぐに話題を切り替えた。


「ふふふ、それより依頼よ。騎士団長――今回は厄介な相手なの、説明するわ」


 軽い調子とは裏腹に、その瞳には鋭い光が宿っていた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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