リドリー近衛騎士団長
「それでは、揃いましたので、会議を始めます」大臣が宣言する。
レイラは、ヴァルターク王国の会議室に主要な要人を集めた。大臣、国内有力貴族、騎士団長のセオ、レメニア王国のモルグ、大商人、天才薬師が揃う。
「お兄様、お願いします」
やつれた表情のリュカ王子が立ち上がり、静かに視線を巡らせた。
「ああ。悪魔の出現と、各国および国内の状況についてだが……その前に、レイラ、お前に宰相を任せたい。どうだろうか?」
「わかりました」
彼女が即答すると、リュカは驚いたように問い返した。彼女の信奉者達から、安堵の声があがる。
「良いのか?」
「その代わり、条件があります。ひとつは、モルグの兄であるモルガンを我が王国に貴族として迎え入れること。もうひとつは、私の近衛騎士団を設立しリドリーを騎士団長とすることです」
「わかった。条件は受け入れよう。よろしく頼む」
重い荷を下ろしたように、リュカは安堵の息を漏らした。
俺としては異論は無いが、彼女の決定には深い意図があると信じている。
「それでは、国内の状況を報告します」
「はい。王宮への悪魔襲撃や魔物の襲来は撃退できており、反政府勢力も鎮圧済みです。ただ、西部のマリスティア侯爵家からの連絡が途絶えています」
「至急調査をしよう。次に他国の状況についてだが」
外務大臣の報告が続く。
「各地で悪魔が指導者を狙ったのは間違いないようです。帝国では独立の動きが見られ、共和国では各地で反乱が発生しています。自由諸国連合は、情報がまだ……」
「わかりました。それでは、私と、国王で、各国の外交官と会いましょう。セオは、リドリーを案内して」
彼女は、これから一日、外交の仕事のようだ。
俺は、セオに連れられて、憧れの騎士団の本部拠点にやってきた。宿舎と訓練所、食堂と武器庫、馬房……
「こんな形で、此処にくるとはな」きょろきょろと見回す俺の姿は、新人そのものだ。
「さて、さっそくですが、部下を選抜しないといけません」セオは、真面目な顔で言った。
「そんなもん、いらないぞ!」本当に、いらないのだ。俺が全て相手をする予定だ。
「旦那、女を選び放題ですぜ」デグが、いつの間にか、ひょっこりと現れ、ついてきた。
「話の邪魔をするな、デグ」
セオは、デグを軽く叱り、話を続ける。
「いえ、レイラ様の直属の騎士団です。そうはいきません。お強いのはわかっておりますが……」
「そうそう、レイラ様の着替えとか、風呂とかで襲われたら。あ、襲うのは、リドリー様か?」デグが茶化して話す。
「何を言ってる? 俺が守るぞ」俺は、真面目に答えたのに、二人は怪訝な顔をした。
「そうですねって、言えるかぁ」デグがニヤリと笑うと、彼の後ろに双子らしい小さな子が二人、無言で立っていた。
「暗殺者ギルドからは、二人連れてきやした」デグが胸を張りながら説明する。
「幾つだ?」俺は少し驚きながら、双子をじっと見つめる。
「子供の世話は……」俺が言いかけた瞬間、双子がすかさず攻撃を仕掛けてきた。彼らの動きは俊敏で、ただのいたずらだと思いきや、その勢いは本気のようだった。
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