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休息の終わり 

 それから数日過ぎた深夜。俺はただならぬ気配に目を覚ました。


「早くないか? 冬はまだだぞ!」


 そこには、不機嫌そうな表情を浮かべた氷雪の魔女が立っていた。


「お前がいるうちに、魔力を貰いに来たのさ。それと、あの女に吸い尽くされる前にな」


「あの女?」


「そこで覗いている泥棒猫だよ!」


 寝ていたはずのレイラが、亡霊のように立ち尽くしていた。


「大丈夫か? レイラ」


 体を揺すってみたが、反応はない。冷たさは感じられないが、どこか生気が抜けたように見える。


「安心しな。金縛りをかけただけだ」


 魔女の不穏な言葉に焦りを覚えつつ、問いかけた。


「お前に聞きたいことがある!」


 しかし俺の言葉は無視され、次の瞬間、身体が硬直し、抵抗する間もなく魔力を吸い取られていく。じわじわと体から力が抜け、意識がぼやけていくような感覚が広がる。


「ああ、やはり旨いな、お前の魔力は。知らないだろうが、この島は女人禁制だ。当然、この小屋もな。だが、お前の番だから許してやろう」


 満足したのか、ご満悦な表情を浮かべると、吹き荒ぶ雪の中に消えていった。



 魔女が去ると、俺の体の金縛りは解けたが、体の芯がずしりと重くなるような感覚が残り、なんとか彼女を抱えて寝床に横になった。


 次の日、目覚めると、レイラは隣にいなかった。キッチンから鼻歌が聞こえてくる。


「おはよう、レイラ」


「おはよう、あれが氷雪の魔女ね。私を目の敵にしてたわ」彼女の目には闘志が宿っていた。


「ああ」


「リドリー、今日からは私が食事を作るわ。胃袋を掴まないとね」


「大丈夫なのか?」


「失礼ね」


 彼女の作る料理は、どちらかといえば個性的で、彼女曰く「異世界風」だった気がするが……


「前にも食べたでしょ?」


「監獄の食事か!」


「勘が良いのか、悪いのか……」


 あっという間に、一週間が過ぎた。それは、俺にとっても、きっと彼女にとっても幸せな時間であったと思いたい。

 昼はダンジョンの探索に出かけたり、ティアに乗って島を案内したりした。


 夜は、本棚の本を読んで過ごすのが日課となった。レイラは興味深そうに古い本をあさり、不思議そうに首を傾げたりしていた。


「この本、読める?」


 彼女が差し出した本を手に取ると、表紙に見覚えのない文字が刻まれていた。


「異国の言葉か……?」


「これは、異世界の言葉よ」


 そんな時間を重ねているうちに、「ちちちち」と伝書鳥が休息の時間の終わりを告げた。


 レイラは溜息をつき、「焼いて食べちゃおうか?」と冗談を言いながら、伝書鳥の足につけられている伝書筒から手紙を取り出し、読んだ。


「リドリー、王都に帰りましょう」彼女の顔が真剣な表情に変わった。


「少し調べたいことがある」


 俺は彼女たちを丘に残し、魔術師の館を訪ねた。


「エルダ、いるか?」


「あら、久しぶりね」年齢不詳の女は、にやりと笑った。


「いや、会ったばかりだろう。氷雪の魔女」


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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