レメニア王国 その9 盟約
「かあ様、ご無事ですか?」
扉を勢いよく開けて、必死な顔でモルグ王子が入ってきた。
「ええ、この方が助けてくれたのよ」
リラは、王子の肩に触れ気を失わせた。
ばさり、と地面に崩れ落ちる。
「何を?」
「可愛い寝顔でしょ。交渉をしましょう。この子を次期王として、庇護し、この地を与えること」
「それは……」俺には判断できない。
「我は何もしていないぞ。悪魔とその仲間が勝つかなと思ったが、そうでもないようだしな」
「なぜ、王を見殺しに?」
「ふふふ、モルグが育ったからもういらないもの。衰えた者の汚れた魔力なんて。綺麗な魔力が手に入る。愛しい我が子」
リラは微笑みながら、モルグの髪を撫でて、低い声で言った。
「魔女……」デグの放つその言葉に、誰もが少し息を呑んだ。
「こいつも、氷雪の魔女の加護を受けているではないか?」リドリーを指差す。
「交渉成立よ」その時、レイラが扉から現れて告げた。
「悪魔達を倒した勇者の次は、物分かりの良い女王様のご来訪なのね」
「レイラ様危険です」デグが驚いた顔をし、彼女の前に立つ。やはり、レイラの手の者だったか。
「レメリアには王国に従軍している第一王子が生きてるわ。どうするのかしら? 私は無駄な殺しはしないわよ」
リラは笑って尋ねた。
「彼には、他の土地を与えるか、王国貴族にしましょう。その代わり、この地は、いえ、貴方は、悪魔でなく、私達と組んでくれるのが条件よ」
レイラは冷静に答えた。
「ははは、盟約か。面白い娘だ」
リラは、モルグの剣で手を切り血をこぼした。レイラも同じようにした。二つ血が、地面を濡らすと、地面に、誓約の魔法陣が描かれ、立ち消えた。
「めでたい。我もここに縛られるのにも飽きた。一年後にまたこようぞ」リラの言葉に、誰もが少し驚いた。
霧湖の魔女は、いつの間にか、いなくなっていた。
「痛くないか?」
俺は、レイラの手をとり、治癒魔法をかけた。
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