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レメリア王国 その7 暗殺者


 俺はデグの手引きで、もう一つの塔に向かっていた。


「この塔にいる王女が、例の囚われの姫ってわけか?」


「ああ。ただ、周囲には怪しい連中がいる。」


 だが、どうにも腑に落ちない。嫌な予感がする。それと、何より異常な魔力の流れがある。


「待て、何か引っかかる。先に国王のところに向かうべきだ。」


「正気か? また捕まるぞ!」


「悪いが、監獄の飯は二度とごめんだ。」


 デグの反対を振り切り、俺は玉座の間を目指して駆け出した。


「騎士団員が守っているなら、すぐに状況がわかるはずだ」廊下を駆けていると、剣戟の音が響いてくる。


「急ごう!」 魔力を全身に巡らせ、音のする方へ向かう。

 

 廊下には、騎士や市民兵と思しき者たちの死体が散乱していた。血の臭いが重く鼻を突き、足元の血溜まりを避けながら進む。辿り着いた先は、国王の寝室だった。


 部屋には手を付けられていない食事が冷めたまま置かれ、異様な空気が漂っている。その中で、騎士団長が執事やメイドの姿をした者たちと激しい剣劇を繰り広げていた。

 

 だが、敵の実力は明らかに上だ。魔力も剣技も洗練され、まとう威圧感が違う。

 

国王を背に守る騎士団長の体は傷だらけで、息も荒い。それでも必死に剣を振るう彼に対し、敵は余裕を見せている。


「最初からこうしておけば良かったのよ」


 目つきの鋭いメイドが、不敵な笑みを浮かべながらレイピアを構える。


「仕方ない。時期を待てとの命令だった!」


 執事が冷ややかに返す。


 国王は剣を手にしていたが、その手は震えている。恐怖に染まった声が漏れた。


「助けてくれ!」


 その瞬間、騎士団長がこちらを振り返り、叫ぶ。


「頼む、手を貸してくれ!」


「無罪ということでいいな」


 俺は口角を上げると剣を握り直し、魔力を全身に巡らせた。


「厄介だな。オレが相手をする。お前は国王を仕留めろ」 執事が冷然と命じる。


「了解」 メイドが頷き、レイピアを振りかざし騎士団長へ歩み寄る。


「させるか!」


 俺は二人の間をすり抜け、騎士団長の前に立ちはだかった。剣を振り上げ、メイドのレイピアを受け止める。


 ぱりんっ――鋭い音が響き、メイドのレイピアが折れて床に落ちた。


「撤退だ!」 


 執事が短く命じると、二人は即座に煙幕を投げた。


 濃い煙が部屋を包み込む。視界が奪われ、咳き込む声が響く中、俺は魔力で煙を払おうとするが、すでに敵の気配は消えていた。


「くそ……逃げられたか」


 煙の向こうで、デグが姿を現し息を整える。


「すまん、追うか?」 済まなそうに尋ねてくるデグに俺は首を振った。


「ああいう輩は、逃げ道に罠を仕掛けてるだろう」


「間違いない」


 俺は、仕方なく騎士団長を手当てすると、国王をちらりと見やる。


 彼は観念したように話し始めた。


「助かった。実は、人質を取られて脅されておったのだ……」


 だが、その言葉の一部には明らかに嘘の匂いがあった。嘘に真実を混ぜる――普通なら騙されるだろう。だが俺には、レイラという手強い相手で鍛えた経験がある。追求しても時間の無駄だろう。命の危機に晒されても話さない気だ。


「それじゃ、答え合わせに向かうか」


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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