レメニア王国 その5 第二幕 開幕
デグの話はこうだ。盗みに入ったところ、王女と思われる子供が拘束されていた。
不審に思い調査を進めているうちに、市民兵に見つかり、不審者として捕まったらしい。
「そうか……」
俺は、やれやれと肩をすくめた。
全く、暗殺者ギルドの連中は口が硬い。ティオスは何も語らず、デグは話すが、肝心な部分は言わない。
心配なのは、彼女の元へ向かった王子と市民兵たちだ。
元女王である彼女なら、すでに何か異変には気づいているだろう。ティアもまだ戻ってきていない。
問題があれば、必ず戻ってくる。
「いいだろう。付き合ってやる。その前に行くところがある」
俺は王城の塔を駆け上がり、悪魔を殺した部屋に入った。
リドリーが突き刺した剣が、そのまま残されている。
「まあ、俺くらいしか抜けないからな」
剣は静かに床に突き刺さったまま、異様な存在感を放っていた。
騎士団員たちが抜こうと試みたようだが、足元には何人もの靴跡が残されている。
※
レイラは、宿に戻って、休憩をしていたら、立て続けに、何組かの来客があった。
そこには、セオ王国騎士団長や、大臣達の深刻な姿があった。
半日もかからない距離ではあるが、ドラゴンの目撃情報や、伝書鳥の方位の記録によって、急いで追ってきたのだろうか。
「全く、みんなストーカーね」彼女は呆れた顔で、彼らを見た。
「ストーカーとは?」
「……まあ、いいわ」
意味を説明したら、彼女の信奉者達が傷つく。優しい彼女は、仕方なく、彼らが欲しいだろう質問をする。
「それで、どうしたの?」
「どうも、各地に悪魔の出没し、悪魔に洗脳された者達が、活動しております」
「それで、兄様はどうしろっていってるの?」
「それが、困った……どうしたら良いのかと、悩まれております……」大臣達は兄の使者なのだろう。
「セオ、お前まで、こんなとこ迄きて、兄様の護衛は?」
「はい、暗殺者ギルドと王女近衛隊で固めております。これから、軍はどのように動けば良いのか? ご指示を?」
「指揮権は、今の総帥である兄……」
彼女は、最終決戦の為に、様々な指揮権を最後迄移譲しなかった。その為の弊害が出ている。
レイラとしても、これからの世界がどうなっていくか、知らない。今迄のような預言者では無いのだ。
「わかったわ。リドリーと相談してみるわ」
彼は、私よりも本質を掴むのに長けている。私は、彼に全幅の信頼を持っている。
終わったはずのゲームに、裏ボスや裏ダンジョンがある。ゲームなら嬉しいかもしれないが、やっとクリアしたばかりだ。
ハネムーンが、半日で終わるなんて……
「あーあ」
宿から、ふと外を観ると、ティアが、上空を旋回している。
こちらに、新たな集団が大挙してこちらに向かってきている。ティアは警戒しているらしい。
「大丈夫よ、セオ達が来ているから。何かあったら、助けてね」
この隣国である小国から、第二幕が始まるのだろうか。
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