レメニア王国 その2 城内
俺は城内に足を踏み入れた。中は、湖から這い上がってきた魔物たちで溢れかえっている。
水藻や苔で覆われた触手が蠢くスライムが無数におり、凶暴な牙を持つ大きな亀がうごめいていた。
「悪魔だな、どこにいる?」
ロングソードを抜き、俺は廊下を進む。斬撃の一閃ごとに、テントクルスライムが倒れ、その死骸が床に転がる。
大亀は、獲物を見つけたとばかりに、こちらを見て進行を防ぐように立ちはだかる。
剣を振ると、大亀は甲羅をかばうように身を縮める。
「どりゃ」
次の瞬間、俺は剣を水平に振り、甲羅ごと斬り裂いた。亀が一瞬うねりながら倒れ、重い音を立てて床に崩れ落ちる。
剣はすでに魔物の血で血塗れだ。
城の人々の姿は見えない。どうやら隠れているらしく、左右の扉はどれも固く閉ざされていた。
俺が扉を叩くと、中から叩き返してくる。
「もう、安全だ」
そう告げて、異臭を辿りながら進む。迷路のような、城内の行き着く先は、城の塔の最上部だろう。
「止まれ! この先にはいかせん!」
塔の入り口で、初めて人影を見かける。この国の近衛騎士団だ。
「話は後だ」
俺は無視して防壁を突破し、階段を駆け上がる。
「待て! 悪魔の信者!」
騎士たちが怒声を上げながら追ってくる。だが、振り返っている暇はない。
「急がねば……」
魔力を全身に巡らせ、さらに速度を上げた。
塔の最上部にたどり着き、扉を蹴破る。
そこには、背中から斬られ、頭から倒れ込む王らしき男と、その前に立つ悪魔の姿があった。
「逃がさんぞ」
俺は迷うことなく悪魔に迫り、一瞬でその息の根を止める。悪魔は黒い塵となり、跡形もなく消え去った。
王のもとに駆け寄る。どうやらまだ息があるようだ。
「大丈夫か?」
そう声をかけた瞬間、背後に騎士団員たちの気配が迫ってくる。剣や槍を構えた彼らが、俺を囲むように進み出た。
「早く、治療を――」
そう告げる間もなく、騎士団長らしき男が叫ぶ。
「国王暗殺者を殺せ!」
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