運命
「何で、また来てしまうの?」
私の目論見は外れた。運命は無理矢理修正されてしまう。
「遅くなった。安心しろ、俺は死なない」
「嘘、何度も何度も私の前で死んだわ」
過去のループで繰り返される眼前での彼の死。もう見たくない。
「話は後だ」
王城の鐘が時刻を告げ、魔物の襲来を知らせた。王城に飛来した魔物に、彼の眷属の空のアイスドラゴンが応戦した。
王都に迫る魔物の群れに、王国軍全軍が迎え撃つ、地をつんざくような音が聞こえる。圧勝だろう。
玉座の影から、やむなく悪魔たちが姿を現した。一匹ではなく、数十匹。想定外の多さだ。王城や私もろとも、悪魔を討つべく、大砲が撃ち込まれ始める。
長くは持たないだろう。
「この時のために生きてきた」
彼が剣に魔力を込めるのがわかる。彼の剣が、悪魔を一刀両断する。
「人の身で悪魔を倒すとは……」どれだけ研鑽を積んだのだろう。
だが、多くの悪魔に取り囲まれ、逃げ場はない。
彼に焦った様子は無い。一匹ずつ、確実に、再生できないように仕留めている。
悪魔が執拗に私を狙う。彼が背に庇う。
残り一匹となった時、隠れていた悪魔が現れ、私を刺した。致命傷だ。
「リドリー、幸せになって」
今の彼ならば、死ぬことはないだろう。これで終わりだ。
ペンダントが、ぱりんと弾け飛んだ。
私の受けた傷は、彼に移動した。
「俺の方が一枚上手だろう」彼は笑い、そのまま崩れ落ちた。
「え? なんで! リドリー、死なないで! またやり直しよ!」
だけど、もうそんな気力は残っていない……
ドラゴンが必死に駆けつけ、残り二匹の悪魔を始末した。