決戦
レイラ視点。 レイラの憂鬱をこちらにまとめました。
最後の春になった。
ティオスからの連絡は途絶えがちになった。老人には、かなり無理をさせてしまい、彼の寿命を縮ませているのかもしれない。
私と彼の十九歳の誕生日が近づいてきた。
「ティオスの孫が、レイラ様に面会を求めています。どう致しますか?」
私は嫌な予感がした。
「会うわ」
もたらされたのは、ティオスの死だった。
「十九歳の彼の誕生日プレゼントのペンダントは無事渡せたそうです」
身代わりのペンダント。もし彼が又、私の前に現れた時の為の安全装置。
「そう。あなたのおじいちゃんには、長い時間、無理な仕事を頼んでしまった……ごめんなさい」
「いえ。楽しそうでした。それと、リドリー様は、まだ島にいるようです」
「そう、良かった」今度は上手くいく、彼を死から遠ざけれた。
私は大事な事を見落としていた。死者から手紙が届くわけがないのだ。それと、ドラゴンの移動速度を。
※
その日は、雲一つない快晴だった。私と彼は一九歳になった。
私が女王になる戴冠式は、夜にすると通達を出し、王城の門は固く閉ざした。
広範囲にわたり、城への接近を禁じ、近隣住民を遠ざけた。
魔物に操られた市民は既に、捕まえている。市民の暴動は起きないだろう。
魔物の襲来は、各地から集結した精鋭部隊が迎撃できるだろう。この王都を見下ろす丘に隠れて布陣させている。
既に、この大陸で起きる大規模のスタンピードの発生拠点は、潰せているはずだ。その為に、大陸全土を侵略をしたのだ。
「残りは、悪魔だけだ」私は計算していた。
魔物の襲来を回避できたと喜んだ後、奴らが現れる。過去何度も、ぬか喜びの後、奴らに殺された。
しかも、世界の影からだ。狙いは私だけ。決まっている。
王城には、私一人だ。私の信奉者や従者達には別れの挨拶をしている。
「姫様を一人には……」
「いえ、人の力では倒せません。大砲を城に打ち込み城ごと殺しなさい」
この為に、準備した大砲。間に合わせる事ができた。
「それでは巻き添えに」
「策があるのです。しかし、誰にも教えられません。任せなさい」
勿論、嘘である。
彼ら薄々疑っているのだろうが、何も言えず、指示に従った。
時の波は、最期の時を決めているのだろう。
寂しい。玉座の間に、一人その時を待っている。
「レイラ、どこだ?」
私を呼ぶ声がする。何度も何度も。幻聴だろう。
愛しのリドリーの幻影が、私の瞳に映った。
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