王位
レイラ視点。 レイラの憂鬱をこちらにまとめました。既読の方すいません。
次の年の春を待たずに、国王は亡くなった。いつもより早い。
「泣かない王女が、毒殺したのでは……」
どれだけ泣いた過去があっただろう。今、私の中にあるのは焦りだけだ。
その時、驚くべき知らせが届いた。
彼が魔女からもらった卵はドラゴンの卵で、その卵が孵り、彼が従えているという。まだ非力だが、やがては比類なき存在になるのだと。
「竜が現れるなんて……」
過去には一度も現れたことがなかった。これで彼が簡単に死ぬことはなくなるだろう。しかし、それは時間ループを止めようとする時の波の意志なのかもしれない。
『もう、やり直しはしない』
彼の父がそう言ったという言葉が、私の耳に残っている。
(お前の望みを叶えてやる。その代わり、時を進ませろ!)
「いいよ。それでも、せいいっぱい足掻いてやる」
少しでも良い条件で、次の時代に繋げるために。
王国の王位は空位となった。
私は父の葬儀を身内だけで行うことにした。追放していた第二王子リュカを、王都に呼び寄せることも決めた。
第二王子は暗殺や投獄を恐れ、最初は拒んだ。だが、国王の葬儀には参列せざるを得ない。
「来年の私の誕生日に、私が女王になります。異論はありますか?」
二人の姉も異論は出さなかった。
「お兄様には、私の補佐をお願いします。それと、騎士団長セオに護衛をさせましょう」
「は?」
リュカが目を見開いた。
傍目には、私が彼を拘束しているように映るだろう。だが、彼を殺させるわけにはいかない。私亡き後の世界を救ってもらうために。
「彼には話があります」
これから起こることを、言える範囲で話した。
リュカ王子は驚きつつも、冷静に受け入れた。彼の統治者としての才は確かだと信じているからこそ、私は彼に頼んだのだ。
大陸は、王国を中心とした連邦国家となった。
国家間の大きな争いは無くなり、新たな枠組みは、多くの恩恵と僅かな不満を生み出した。
「しかし、何のために、軍事力を強化するのですか?」
「人の敵は、人だけでは無い」
「しかし、財源が足りません」
「王族の倉庫にあるものをすべて売り払いなさい。開発した技術を民衆に提供しなさい。緊急事態なのですよ」諸刃の刃なのは理解している。
その歳、私と彼の誕生日は祝うどころではなかった。すべてが手いっぱいで、彼の誕生日を忘れていたことにすら気づかないほどだった。
「しまった……」
胸を締めつけるような後悔だけが、私の中に残った。
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