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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

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246/251

レオナール・ノクスフォード侯爵


帝国落人の村 ― 侯都シュベルト近郊


 侯都シュベルト近くの帝国落人の村。

 霧の晴れ間から差し込む朝光の中、古びた屋根が静かに光を返す。


「まさか、戻ることになろうとはな」

 ボリスが、懐かしげにレオナールへ言った。

「ははは、でもカンベ殿は張り切ってますが」


 庄屋の中では、カンベが村人たちに指示を飛ばし、荷を片付け、次の作業を采配している。

 かつて流浪の民だった男の姿はもうない。そこにいるのは、この土地を治める“名主”だ。


「すっかり、板についてしまったな」

「ボリス殿、ウラク子爵領の引き継ぎは、もう済みましたか?」


「ああ、近いうちにそちらへ住まいを移すつもりだ。……カンベは知らんがな。だが本当に良いのか?」


 ウラク子爵領――肥沃な農地を抱える豊かな土地。そこを引き継ぐことで、この村の貧困を救うこともできる。


「ええ、国王の決定ですから。行きましょう」

 ボリスは小さく頷き、カンベに合図を送った。

 侯都へ続く山道を、農政局の若者が先導する。


 長い木立を抜け、馬車の停まっている開けた道に出ると、彼は立ち止まった。

「それじゃ、ここで」

「え?」


「私の役目は終わりました。旅に出るので、お別れです。……楽しかったです」

 若者は軽く頭を下げ、振り返ることもなく、再び森の奥へと消えていった。


「優秀な男だ」

 カンベが、しみじみと呟く。

「ええ。引き留めたのですが駄目でした。きっとスサノオ様の新たな使命を与えられているのでしょう」


王国会議 ― オルフィン侯爵領

 レオナールたちがオルフィン侯爵領の会議室に入ると、すでに招集された面々が整然と立ち上がり、敬礼を送った。


 普段は会議に顔を見せないサクナの姿もあった。彼女は微笑みながら、一歩前に出る。

「これより、スサノオ大王より賜りました書面を読み上げます。――執政官の任命です」


 新たな人事が告げられる。

 イズモとエンジが再任、オダニが執政官に返り咲く。


 そして、アオイの代わりにはタリアンの名。

「アオイの不正により、伯爵領はすべて取り上げる。タリアンは今回の功績をもって、新たな男爵家を興すこととする」


 広大だったアオイ伯爵領は、分割統治されることとなった。

 ただ、ミナグロスはタリアン家のままだ。

 レオナールの名前は、そこになかった。


 ――だがサクナは知っている。彼の新しい家の場所を、すでに決めているのだ。


「それと、執政官を一名増やす」

 読み上げられた名に、ざわめきが起こる。

 ――カンベだった。


「引退した身だがな……」

「執政官の給金があれば、新しい農具も買えますよ?」

 イズモが冗談めかして言うと、笑いが起きた。

「そうだな。引き受けよう」


 その豹変ぶりに、さらに笑いが広がる。

 やがて場の空気が静まり、サクナが声を整える。


「オルフィン侯爵は非業の死を遂げました。彼には後継者もいません。ですが――オルフィン侯爵領は、王国の盾。才ある指導者が必要です。……レオナール、頼みます」


 温かな拍手が会議室を満たした。

「私が狙ってたのに……」

 エンジがぼやく。

「向いてないぞ」

 オダニがすかさず返し、軽口の応酬が始まる。


「こほん。それで七人となります。――国王の指示を仰がず、進めてください。以上です」


 サクナは、レオナールの手を取って歩き出した。

「どこに行く?」


「もちろん、家の場所を見に行くのよ。約束したでしょ――ノクスフォード侯爵」


ご声援ありがとうございました。ここまでお読み頂き感謝いたします。是非ご評価をお願いします。これからの励みとなります。


ありがとうございました。

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