表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

240/251

対決の時


 数刻にわたる激しい剣戟の末、二人は同時に剣を下ろした。

 息が白く散り、緊張が解けていく。

「……ここまでだな」


「引き分けですね。やはり、お強い!」

 青年が笑うと、オダニは肩をすくめた。

「おいおい、農政局の役人に負けたら、俺の立場がないだろう」


 周囲では軍団兵たちが静かに座り込み、果し合いを観客のように見守っていた。

 オダニが声を張り上げる。

「今夜はここで野営する! 準備しろ!」


 号令一下、兵たちは素早く動き出した。

「飯でも食っていけ!」

「もちろん、最初からそのつもりですよ」

 青年が笑うと、兵たちの間にもわずかに笑みが広がった。


 石碑を地下に封じてからというもの、魔物のざわめきは影を潜め、気配さえも消えていた。

 その夜は、襲撃一つなく、ただ満月だけが冴え冴えと光る、奇妙なほど静かな夜だった。


「そういえば……スサノオ大王様は、今どちらに?」

「長期の留守を仰せつかり、使命を果たしておられるとのこと。留守の間は、各人に指示が出されているそうです」


 翌朝、彼らは帝国領へ入り、エストグラードを目指した。

 途中、農地で害虫駆除をしている帝国軍と遭遇する。


「ここにもいるぞ! しかもかなり大きい!」

「全域で繁殖してやがるな。……農民どもは何を見逃してるんだ?」

「仕方ないですよ。あれだけ広大な畑、目が回りますって」


 そのやり取りの最中、帝国兵の士官がオダニたちを鋭く睨みつけ、怒鳴った。

「貴様ら、どこから来た!」

 オダニは一歩前に出る。


「森を越えてきた。背中にあるのは農薬だ。レオナール様の命令で届けに来たオダニ軍だ!」

「なっ……それは失礼した! ケルビン様の城へご案内しよう!」


 農薬を届け終え、帰ろうとした矢先、ケルビンが呼び止める。

「オダニ様、次は害虫駆除を手伝っていただきます!」


「はぁ? そんな指示は聞いてないぞ」

「いえ、レオナール様からは農薬と人を手配した。好きに使ってくれと手紙を頂いています」

青年が肩を竦める。


「ほら、やっぱりそういうことです」

オダニは天を仰いだ。

「……ったく、人使いの荒い御仁だ」

 こうして彼らは、しばらく帝国に留まり、害虫駆除の手伝いをすることになった。



 同じ頃――アオイ伯爵は軍事会議を開いていた。

「敵の動きはどうだ」

「峠道の一部を封鎖している模様。それ以外の兵は各領地に戻り、農作業をしているとの報告です」


「農作業だと? 詫びも賠償もまだだというのに、停戦のつもりか……!」

 伯爵の拳が机を叩いた。

 傍らのタリアンが口を開く。


「父上、ここは停戦を模索すべきでは……」

 だが、トオノもキタノも黙したまま、表情を読ませない。

 そこへ伝令が駆け込む。


「マルコー商会長が至急の面会を求めております!」

「何の用だ」

「農薬が、オダニ軍に奪われたと訴えております!」


 次の瞬間、オダニの手からワインの杯が宙を舞い、赤い雫が床を染めた。

「……裏切り者はレオナールだ。もう許さぬ。必ずこの場に引きずり出せ!」


 会議室に緊張が走った。

 対決の時だ。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ