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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

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乱入者


 サクナたちが買い出しから戻ると、兄とレオナールは牧場で作業着に着替え、険しい表情で議論をかわしていた。


「じゃあ、明日、獣医さんも交えて打ち合わせしましょう!」

「わかりました。それに、近くの牧場主も呼んでおきます」

「うん、それじゃ農政局で会議ね!」


 レオナールは作業着のまま家に向かおうとした。

「執政官、それだと家が汚れますよ」

「構わないわ。洗い場もあるし、これからは私も手伝うから」

「でも、匂いも……」

「ははは、仕方ないじゃない」


 サクナの園芸部の域に留まらない、本格的な農作業スキル。買い出しでその腕前ははっきりわかっていた。


 その夜、マクラーレン家で急遽歓迎会が開かれた。

「まさか、我がマクラーレン領にお嬢様が居を構えてくださるとは…光栄です」


「いえ、こちらこそよろしくお願いします!」

 素朴な家庭料理だが、新鮮な野菜やフルーツの味は格別だった。

「でも、レオナール様が農政局に行く間は、どうされますか?」


「もちろん、一緒に行きますよ。秘書になりますから」

 レオナールは目を丸くした。

「え……?」

「心配しないで、レオ。家のことは執事やメイドに任せるから」


 実はサクナはキャラバンに紛れ、護衛騎士団と共に移動してきていた。

「だから、残りの家も買い取るわ。使いやすさを考えたら、新しく宿舎を作ろうかしら……」

「それなら、私が設計したいです!」カシスが元気に言い出した。


「そうね、そうしましょう」

 兄はレオナールと牧畜の話に花を咲かせ、マクラーレン卿はオダニと古い戦争の話。

 カシスはサクナにべったりくっつき、王都の話を興味津々で聞いていた。


 そのとき、一人の騎士が現れた。

「申し訳ありません。重要なお客様と会食中でして、お通しできません!」

 だが、アオイ伯爵の息子・タリオンは、執事長を押しのけて堂々と入室した。


「お前、俺が誰か知ってるだろう? 俺より重要な客がいるわけないだろ! どけ!」

「カシス、大事な話がある。時間をくれ!」

「おい、タリオン! 今は会食中だ。後にしろ! すぐ出て行け!」


 マクラーレン卿が怒りを押さえつつ、タリオンの胸を押す。

「執政官との会食なら、いつでもできるでしょう?」

 タリオンは会食相手の一人レオナールを見つけて言った。


「ふざけるな、お前にカシスをやるとは言ってないぞ! 出ていけ!」

 カシスの兄も声を上げる。

 だが、タリオンは去ろうとせず、顔色は悪く追い詰められた様子だった。


 レオナールは、彼の以前見た傲慢な態度との違いに驚いている。

 快活なカシスも、どうしたらいいか戸惑っていた。


「カシス、話をして来なさい! 待ってるわ」

 その声は、ナクサに姿を変えたサクナの声だった。


「ありがとう!」

 カシスはタリオンの手を取り、部屋を出て行った。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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