表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

212/251

マクラーレン家

「へえ、細かいところまで気を遣ってあるのね?」

 サクナは家の造りに感心の声をあげた。

「ありがとうございます」

「この家の設計者の人は、とても優秀だわ!」

「へへへ、私です!」


 カシスは嬉しくて、その場で照れながら飛び跳ねた。

「はしたないぞ!」オダニが叱る。

「じゃあ、契約しましょう!」


 どんどん話を進めるサクナに、レオナールは黙って見守るしかなかった。

「ありがとうございます! 恥ずかしいですが、ぜひ我が家に」



 カシスのマクラーレン家には、年老いた父と兄がいる。母は既に亡くなっていた。

「お父さん、兄さん。あの屋敷、契約者が現れたわ!」

「本当か? だが……お前の趣味で建てた家だし、街からも離れてるぞ」


 兄の声には乾いた疲労が滲んでいた。借金取りに毎日責め立てられ、喜ぶ余裕など残っていない。


「何を言うの、兄さん。建材も内装にもお金をかけてるのよ! 私の給料を全て注ぎ込んだんだよ!」

「そんな金があるなら、少しでも借金を返せばよかった……!」


 兄の拳はわずかに震えていた。怒りというより、積年の疲労がその手に刻まれている。

 言い争ううちに、オダニの馬車がマクラーレン家に到着した。


「そんなことより、お客様を出迎えなきゃ。父さん、早く来て!」

「何を言ってるんだ、カシス。ただの借主に、男爵が出迎える必要などない!」


 兄はつなぎの作業着姿。土まみれで、着替える暇もなく次の作業が待っていた。

「お邪魔します。マクラーレン男爵はおいでですか?」屋敷の扉が開き、二人が入ってきた。


「ああ、父は在宅しているが、用事で手が離せなくてな……お前は?」

「失礼します。この度、オルフィン侯爵領の執政官を命じられました、レオナールです。大家様にご挨拶を」

「ふうん。家は貸してやる。だが、カシスは官僚如きにはやらんぞ!」


 兄は妙に喧嘩腰だ。妹を奪われるのではないかという不安と、疲弊が重なっていた。

「いえ、カシスさんはいりません!」


 レオナールは即答する。声が少し裏返り、背後からサクナの気配が刺さり冷や汗が首筋を伝う。

「なんだと失礼な奴だ! うちのカシスのどこが不満なんだ!」


「し、失礼なのは……お前だろう。執政官に対しての無礼な態度、見過ごせん!」

 レオナールが答え方を考えている間に、オダニが前に出て威圧する。


「ふん。オダニか。執政官を首になった一代限りの男爵じゃないか? 歴史のある我がマクラーレン家と一緒にするな!」

 兄は強がったが、声の端には悔しさが滲んでいた。

「兄さん、やめてよ。さっきから暴言ばかり。父さん、早く来て!」


 カシスはたまらず大きな声を上げた。

「どうした、騒がしいな。……借金取りならお断りだぞ!」

 階段を降りてきた父の第一声に、カシスは恥ずかしくて顔を下に向ける。

 その言葉は、日々繰り返された借金取りの訪問から、もはや口癖になっていたのだ。

「ははは、面白い冗談ね。生まれて初めて借金取りに間違われたわ!」


 サクナが笑って言った。

「お前は誰だ?」

「この牧場は、子供の時に母さんと来て以来。マクラーレン卿、覚えてないかしら、サクナよ!」

マクラーレンの眠そうな目が大きく見開かれた。

「お、お嬢様。カシス何をしている! 早く、応接にお通ししろ!」


 兄は呆然とし、次の瞬間、その場に崩れ落ちた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ