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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

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祭りの日

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  ゴールドハルトが率いる巨大なキャラバンが、ツーソンへと入ってきた。


 先頭の旗が街門をくぐった瞬間、街にいる人々が一斉に息を呑む。煌びやかな馬車、並ぶ荷車、護衛の冒険者たち――まるで王都の祭礼をそのまま持ち込んだかのような壮観だった。


「おい、あれを見ろ! 先頭は……ゴールドハルト商会長だ!」

「誰です?」


「まったく、若いのは知らんのか! あのレイラ様を支えた大陸一の大金持ちだぞ!」

「ってことは、拝めば金持ちになれるんじゃねえか?」


 農民も町民も口々に叫び、笑いと歓声が入り混じる。通りはあっという間に群衆で埋め尽くされた。

「護衛してるのは……まさか東方旅団じゃないか!?」


「大陸最強のパーティが、なんでツーソンに?」

「女の姿があるぞ、東方旅団に女なんていたか?」

 群衆は目を皿のようにして噂を交わし、熱気はさらに高まっていく。


「商会の商品は、どこに納めるんじゃ?」

 マミヤがレオナールに振り返るが、代わりに馬を駆けてやって来たカシスが答える。


「農政局には倉庫がありません。ツーソンでは商会倉庫を借りるしかないのです」

「なるほど……それは少し厄介ですね」


 レオナールが眉を寄せると、マミヤが豪快に笑った。

「だったら、その倉庫に入れちまえばいい!」

「そうだな」

 朗らかな声で割って入ったのは、ゴールドハルトだった。

「保管料やら場所やら、不安もあろうが心配は無用だ。交渉は、この俺に任せておけ!」


 彼は高らかに笑い、黄金の鎖を揺らしながら馬車を降りると、市場へと歩み出した。

 付き人に導かれ、ゴールドハルトはマルコー商会の店先に立つ。野次馬の群れがずらりと後ろに続いた。


「マルコー、いるか?」

「お待ちください、いま――」

 店員が慌てて奥へ駆け込む。

「誰だ、俺を呼び捨てにする無礼者は……」

 現れたマルコー商会長は言葉を飲み込み、目を大きく見開いた。


「……ゴ、ゴールドハルト様!?」

「久しいな。呼び捨てはまずかったか? 随分と偉くなったものだな」

「いえいえ、とんでもございません! どうか、これからも遠慮なく!」


 マルコーは慌てて頭を下げ、額に汗を浮かべる。

 ゴールドハルトは片腕でその肩を抱き寄せ、耳元で一言囁いた。


「――倉庫と配送、任せたい」

 その低い声に、マルコーは思わず背筋を伸ばす。

「もちろんですとも! 私にとって最大の誉れです!」


「よし、話は決まりだな!」

 ゴールドハルトは朗々と笑い、店先にいる部下たちへと手を振った。

「運び込め! それと王都から持ってきた品も並べるぞ!」


 その一声に、町全体がどっと沸き立つ。通りすがりの街民が思わず荷を担ぎ、群衆は歓声を上げて押し寄せた。


「王都の品だって!」「見せてくれ!」

 キャラバンからは屋台や売り子、踊り子たちが次々と繰り出す。香ばしい肉の匂いが広がり、太鼓がどんどんと鳴り響き、鈴の音が軽やかに舞う。


 子供には甘い菓子、大人はには香り高い酒が振る舞われた。

 ツーソンの町は、まるで祭りが始まったかのような熱狂に包まれた。


 ―いや、それはすでに祭りそのものだった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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