表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/251

スサノオの剣


 翌朝、伝聞鳥が扉を叩く音で、レオナールは目を覚ました。

 サクナヒメからの手紙だ。毎日のやり取りは、甘い言葉よりも、彼がしたことや感じたことの報告がほとんど――日記のようで、業務日誌のようでもあった。


非難の言葉は一つもない。

「無理しないでね!」

「体に気をつけてね!」

たったそれだけの言葉に、彼女の優しさと気遣いが滲んでいた。


――だが、今日の手紙は違った。


 レオナールは侯都シュベルトへ向かった。荷物を取りに行くという口実を立てていたが、本当の目的は別だ。


 エンジとオダニに会い、話をすること。内務局に、エンジの姿は無く、職員は練習場だと言った。

練習場の扉を押すと、木剣がぶつかる鋭い音が響いた。金属のきしむ音、呼吸の荒さ、汗が落ちる音。


「やはりここにいたか!」

エンジは顔を上げ、レオナールに気づくと甘えるようにオダニに話しかけた。


「疲れたぁ。もう休もうよ。レオも来たし」

「何だ、お前から練習しようと言ってきたのに、もう休みか?」


「じゃあ、俺は帰るよ」

 オダニは木剣を握り、去ろうとする。だが、その動作には苛立ちと焦りが混じり、握る手に微かな震えがある。


「いえ、オダニさんに話があります!」

「前にも言った。執政官でない俺には話すことはない」その言葉に汗が噴き出し、全身の緊張が増す。


「今日の剣は、あまり良い剣ではありませんでしたね。何か迷いがありますか?」


――その一言で、オダニの怒りが爆発した。

「何だとぉ! お前にわかるのか!」

 木剣が振り下ろされる。だがレオナールは微動だにせず、瞳に揺らぎはない。


 オダニの手が止まり、初めて自分の心が見透かされていることを悟る。

「やめて! オダニ!」

 エンジに手を押さえられ、さらに怒りを露わにする。

「真実を突かれて怒るとは、修行が足りませんね!」


 レオナールの追い打ちに、エンジは理解したようにうなずいた。


「ああ、そうだ。だから解任されたんだろうよ」

 オダニは再び去ろうとするが、その背中には迷いがちらつく。


「話があると言っているでしょう。オダニ男爵、あなたには私の警備をしてもらいます」

「冗談だろう。爵位も持たないお前を守れと?」

「確かに不貞腐れた男に命を預けるつもりはありません。ですが――」


 レオナールは懐からナイフを取り出す。刃はアダマンタイト、柄には宝玉の魔光が映え、王家の紋章が鋭く輝く。エンジも息を飲んで見つめる。


「スサノオ大王様の御作なのか?」

「はい。下賜されたものです。サクナヒメを守れなかったら、お前はこれで死ねと。オダニ男爵にも、大王様のご指示が下るでしょう。私を守れと。これを預けます」


「こんな大切なもの、預かれない」 オダニはおろおろした。


「私が死ねば、サクナを守れません。だから、あなたに託します。私は本音で語り合える者にこそ、警備をしてほしいのです。どうか……力を貸してください」


 レオナールは深く頭を下げた。

 オダニは、自分の運命を悟った。



お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ