料理
レイラ視点。 レイラの憂鬱をこちらにまとめました。既読の方すいません。
「料理がしたくなったわ」私は料理長と共に、キッチンに立っていた。
「これは、国王殿下も喜びますな」
「うーん。そうしたいとこだけど、私の腕ではね。そうだ、監獄の彼に食べさせましょう」
「そんな、もったいない。寛大なお心に感謝
するでしょう」
「私は作ってないわ。冷めないうちに運ばせて」
メイド長に指示をすると、私は部屋に戻り、化粧をした。
どの服が、どの髪型が、彼は好きだったかしら。鏡に映る自分の姿を見ると、涙がとめどなく頬を流れていった。
「あの子が、レイラ様を裏切るなんて……」
メイド達の声が背後でささやかれる。
私は崩れた化粧を直し、心の中で覚悟を固めた。
彼は失意の中、独房にいた。
「開けて」看守に指示をし、独房の扉を開けさせた。
食事は残さず食べていた。それが嬉しかった。
「美味しかった?」とは聞けなかった。
「悪いけど、二人にしてくれる?」
私は、警護兵を下がらせた。
「ねえリドリー、お願いがあるんだけど」
「何だ?」
彼は怒っていた。
「取引をしましょう。もし、あなたがこの国に二度と戻らないと誓うなら、釈放するわ」
「やだね」
「もちろん今まで尽くしてくれたんだもの。手切れ金も渡すわよ」
「……やだね」
彼は、また私の言うことを聞かない。約束を守る男は、なかなか約束してくれない。
「なんでよ、一生後悔して生きるといいわ!」
(なんでよ! 私は、あなたを守りたいだけなのに!)
私が彼に出来ること、ただ一つだとわかっていた。
目論見は、やはり外れた。彼が災禍に居合わせないように――最果ての地に。
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