訣別
俺の生活は一転した。町に放り出されることはなかったが、屋敷ではなく、奉公人の住む離れの小屋で下男として働くことになった。
彼女には、新しい友達が周りを取り囲み、華やかな生活を送っていた。その中には、他国の王子や大商館の若き後継者、天才薬師の姿もあった。
彼女は、美貌に磨きがかかり、誰もがその美しさに酔いしれた。
俺は、奉公人たちが協力してくれたおかげで、空いた僅かな時間で剣を習い、学問を学ぶことができた。
「いつか、振り向かせてやる!」その一心だった。
それから五年が過ぎ、彼女と俺は十四歳になった。
俺は、残念ながら学問にはからっきしだったが、剣の才能はあり、道場で一番弟子にまで上り詰めた。
「これなら、騎士団に入れるな」道場長も太鼓判を押してくれた。
その後しばらくして、彼らの住む王国に流行り病が蔓延し始めた。
流行り病は、多くの死者を出し、その脅威は止まるところを知らなかった。
だが、ある時を境に、急激に病気の感染が収まった。
「レイラ王女が、国王に訴えた感染対策が成功したらしい」
「レイラ王女が交渉して、隣国から薬の材料を仕入れ、天才薬師に薬を作らせ、大富豪がそれを配ったらしい」
まことしやかに、そんな噂が街に流れていた。
国民の彼女の評価は、止まるところを知らなかった。
王国の後継者のうち、兄二人が流行り病で亡くなり、彼女の王位継承権は五番目となった。
しめやかに行われるはずの彼女の兄たちの葬儀が、まるで彼女の凱旋パレードのような様相を呈し、そのことに、眉をひそめる者もいた。
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