表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
サクナヒメ・ノクスフォードのリベリオン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

192/251

土を食う執政官


「また、この人たち、土いじりしてる」

カシスはレオナールに見られたのが恥ずかしくて、少し馬鹿にしたように呟いた。

「ふうん。なるほどね」

彼女の言葉は耳に入らず、レオナールは職員たちの動きを真剣に見つめている。


「あら、カシスちゃん、こんなところに来るなんて珍しいわね。そちらの方は?」

職員の一人が声をかけると、みんなの視線が一斉に注がれた。


「えっと……新しい執政官の方よ」

カシスが答えたが、レオナールは農地に入り、自分が名乗っていないことに初めて気がついた。

だが職員たちの反応は冷たく、いや、敵意すら感じられた。


「レオ……」

名乗ろうとしたその瞬間、声が遮られた。

「執政官様、農政の運営は商会たちがうまくやっているよ」

「ああ、金は使わないから安心してくれ。財務にもそう言ってある」


 彼らはそう言い捨てると、再び土を掘り起こし、輪になって議論を始めた。

「農政局は今までイズモ様のご担当だったんだ。でも商会に取り上げられて、こんなことに……」

 カシスがレオナールに説明するが、彼は職員たちの会話に夢中で聞いていない様子だった。


「だから、この土地の土は肥沃なんだ。あまり手を加えない方が……」

「違う。それでは場所によって収穫量に差が出てしまう」


 レオナールは足元の土を拾い上げ、指で触れ、口元に含んだ。

「執政官、何を?」

カシスが思わず大声をあげると、職員たちが一斉に振り返った。


「これは素晴らしい黒土ですね。王都の新しい肥料を混ぜている。これでは過剰すぎます」

レオナールは冷静に指摘した。


「わかるのか?」職員たちは驚きを隠せなかった。

「もちろんです。それより、自然の堆肥がきちんと撒かれているか、全ての農家を調べましょう。それに害虫の被害も考慮し、この土に合う農薬の研究も進めるべきです」


 突然現れた執政官の博学ぶりに、職員たちはざわめき始めた。

「カシス、執政官様は何者だ?」

「……」カシスは首を振り、答えられなかった。


「紹介が遅れました。私はレオナール・ノクスフォードと申します。どうぞよろしく」

彼がそう名乗ると、職員たちは一斉に農地に膝をつき、頭を下げた。


「失礼いたしました。サクナヒメ様のフィアンセの方とは……」

「あの高名なノクスフォード男爵にお会いできるとは」

「論文も拝読しましたし、『趣味の園芸』も毎週欠かさず読んでおります。ファンです」


 レオナールは勉強は得意ではなかったが、農業に関しては若手研究者として名を馳せていた。

「まったく、現金な人たちね」


 カシスは苦笑しつつも、サクナ様のことをあれこれ聞き出そうと、内心で野心を燃やしていた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。新作 リリカ・ノクスフォードのリベリオンも是非一話だけでもお読みください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ