襲撃
レイラ視点。 レイラの憂鬱をこちらにまとめました。既読の方すいません。
葬儀からしばらく経ったある日、私の住む屋敷が何者かに襲撃された。
それは大掛かりな襲撃で、屋敷全体が混乱に包まれた。
「襲撃者の数が多い」それが率直な感想だった。疫病の生存者と比例して増えていく……悲しい現実だった。
大きな誤算があった。
彼が、不審者を発見して知らせに来たのだ。
いつもなら、離れている奉公人達の館からは、気づかれる前に戦闘が終わるのだ。
私の屋敷は、私の信奉者の一人、若き騎士団長 セオの元、迎撃の体制をとっていた。
彼は、衛兵たちの列に加わり、敵を迎え撃とうする。
「リドリー、何やってるの? 邪魔よ!」
久しぶりに見る彼は、惚れ惚れする程、カッコ良い。
「任せろ! 俺はこう見えて免許皆伝間近なんだ!」
はっと、我にかえり、私は叫んだ。
「衛兵、あの者を下がらせなさい!」
彼は唖然としたまま、衛兵たちに連れられて引き下がっていった。
彼はとても悲しそうで、私の胸にチクリと痛みが走った。
時代の波が、どんどんと大きくなっている。もう繰り返させない。大いなる意志を感じる。
彼を守るには、もう動くしか無い。
レイラは、その夜、一生分の涙を流した。
数日後、彼を王宮に呼び出した。
「後悔のないよう用事を済ませて、必要なものは全て持ってくるように!」
王宮で、王女の屋敷を襲撃した敵を撃退した者たちへの報奨授与式を行った。
私の屋敷に仕える奉公人たちも金一封を渡した。
そして、次は彼の番だった。
「父上、式典の途中ですが、よろしいでしょうか?」
これからやることで、彼に嫌われてしまう。いや、嫌われる必要がある。そう思うと、私の声は微かに震えた。
「ああ、どうした、レイラ」
「私の屋敷襲撃を企てた者が、この中におります」
会場はざわつき始めた。私の言葉を遮る者は誰もいなかった。
「既に指示役は捕らえています。ここに……」
セオに連れられて、大臣たち数名が入ってきた。
「お前たちに指示を出した者を指しなさい!」
大臣たちは嫌々と指を向けた。その先には、彼女の一つ上の王女と王子がいた。
拿捕した大臣達は、無能でやる気のある者達。これから私のやるべき事に、邪魔になる存在。だから、弱みを握って私の言いなりにした。
一つ上の姉は、とても優しい姉だ。同盟国との政略結婚。だが、とても良い相手だ。幸せになれるはずだ。羨ましい。
第二王子は、国外追放だ。彼はこの国にいると殺される。過去、何度も暗殺されてきた。
本当の敵は、なかなか尻尾を出さないが、私は知っている。
「そして、屋敷襲撃を手引きした案内役がいます」
私の指が、彼を指し示していた。目を見ることは出来なかった。
彼を監獄に送った。
私の王位継承順位は、三番目となった。嬉しくも何ともなかった。
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