エピローグ 1 ※レイラ視点
帝都に戻ると、王国のリュカ国王から連絡があった。
「連合王国、降伏」
あまりに突然の報せに、リドリーは目を見開いたが、私は当然のように受け止めていた。
すべて、シナリオ通り。やっと上手くいった。
クレオン率いる王国海軍がセーヴァス港を離れ、帝国へ向かった――ように見せかけていた。
モルガンら騎士団も、魔女ノクスも不在。その隙を狙って、連合王国の海軍全軍が動いた。
私たちは敵を、中間に浮かぶ海賊島へと誘い出した。
島の魔女ナイア、守備隊長エーリヒ、そしてネグロクサ商会が連携して迎え撃つ。
さらに、姉アエラの嫁ぎ先――シシルナ島海軍が加勢し、三方から挟撃。敵に大打撃を与えたらしい。
「捕虜の数が膨大で、対応が大変です」
マリスフィア侯爵マルコと、ハーゲン子爵から報告が届いていた。
クレオンの海軍は、帝国へ向かうふりだけして、敵のいなくなった連合王国の港へ悠然と寄港。
王国の旗を、高々と掲げた。
「終わりだ、全員虐殺される!」
「首相が悪いんだ。あいつを王国に差し出そう!」
「そうだ、俺たちは元々、王国と仲良くやりたかったんだ!」
混乱の中、暗殺者ギルドのデグたちが動いた。
王国との同盟推進派を誘導し、クーデターを起こさせた。
主力である魔術師隊は不在。
防衛部隊は瓦解し、クーデターは呆気なく成功したという。
「クレオンは、活躍の場がないって、ちょっと拗ねてましたよ」
「それじゃ、次は共和国に向かうように」
戦わずに勝てるのなら、それに越したことはない。
人には――他にもっと恐ろしい脅威がある。
一つの対決は終わった。
けれど、終わりなき人の欲望との戦いは、まだ続くのだと悟った。
「ふぅ……」
私は小さく溜息をつき、腹の中で暴れる子を、そっと撫でた。
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