旅立ち 番外編
ティアは咆哮し、海辺の海水を凍らせた。新たな魔物は、現れなくなった。
くたくたになりながら、俺たちは別荘に戻る。
「少し、腹が減ったな」いい匂いがする。
別荘の庭では、メイドと執事が夕食の準備を整えていた。
「あれ? レイラは?」
「大丈夫だ。まあ、飲め。感謝する」
席に座らされると、執事が邪魔をしないように、服を綺麗に整えてくれる。
最初は知り合いたちが酒を注ぎにきていた。
「ありがとう」
「疑って悪かった」
一段落した頃、騎士団の精鋭たちが現れ、さらに王女近衛隊の隊員たちが囲んでくる。
全員が、歓迎とも、威圧とも取れる態度で「次は私が」と酒を注ぎにきた。
「是非、剣の指南役に!」
「魔物討伐団長に!」
酒の強い俺も、さすがに倒れそうになる。
「何匹倒した?」騎士団長が尋ねてきた。
「いや……わからん。」途中から戦いに夢中になりすぎて、数えるのをやめていた。
「俺たちは、全員で四百匹」
「何だって!」悪くない討伐数だ。負けたかもしれない。
「まあ、今回は引き分けにしてやろう。しばらく、王女様にも休みが必要だろうからな」
俺は、お前ら、悪魔倒してないじゃん、と口に出すのを必死に抑えた。あれは、氷の島で鍛錬しないと倒せない。
その時、第二王子が席を立ち、いきなり扉を開けた。
そこには、白いベールとドレスに着替えたレイラが立っていた。美しかった。
「今日は、お前たちの婚約祝いだ」
※
「リドリー、起きて!」
俺は、寝ぼけ眼をゆっくり開けた。どうやら潰されたらしい。まだ薄暗い早朝だ。
「あ、レイラ、本物か?」
「静かに! 馬鹿なこと言ってないで、逃げるわよ!」
皆が寝静まる中、俺はレイラを抱きしめて、全力でティアに飛び乗った。
「あ!」俺は、わざとティアについている金の足環を壊した。
「さて、次こそ、氷の島に」
「ええ」俺たちはうなずいた。
ティアの羽の中に、伝書鳥が隠れていたが……
王都に別れを告げ、最果ての島に向かって、俺たちは出発した。
自由を求めて
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裏エピソードの、レイラの憂鬱。
新作 シシルナ島物語もよろしくお願い申し上げます。