表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

157/251

尋問 2

 「つまり、元・第一皇子である兄さんの命令だと言うのか?」とマルクが尋ねる。


「お前の口から“兄”などと。不愉快だが……まあ、許してやろう。ミハイル様のご意向だ。必要なら、書状でも見せてやるが?」


 ようやく、ハーンがここまで強気だった理由が見えてきた。

「……だが、兄は病に伏しているはずだ。それに、すでに皇帝ではない」


 本来、第一皇子ミハイルが帝位を継ぐはずだった。彼には支持者が多く、前皇帝の代から仕えてきた保守派の貴族たちは、こぞって彼に忠誠を誓っていたという。


 カリスマ性もあると聞くが、俺たちは未だ彼の姿を直接見たことがない。

「くっ……」

 ハーンは悔しさを噛み殺すように唇を噛んだ。


 俺はナッシュ兄妹にハーンの屋敷を調べさせている。ルクスも同行させた。おそらく、途中で食事でもして、のんびり帰ってくるだろう。何か食べ物を頼んでおけばよかったと、今さら思う。


「だが、この命令は昨日今日の話ではない。ファウストの活動を支援せよという指示を受け、我々はそれに従って動いていたに過ぎん」

「嘘をつけ。じゃあ、なぜ魔女との契約を破った? あれは皇帝と正式に交わされた協定だったはずだ!」


 魔女と皇帝家の間で長年結ばれていた不可侵協定。それを一方的に破棄するのは、州知事としての権限を明らかに超えている。

「……」

 ハーンは、口を閉ざしたままだった。


 仕方なく、俺たちは州兵長を別室に連れ出し、取り調べることにした。彼は、打って変わって饒舌だった。


「つまり、あの刻印はファウストの命令か?」

「ああ、魔女避けのためだと聞いた。ファウストが作った刻印で、俺たち兵士にも全員押されてる。……でもな、貧民の連中に押されたやつは、魔力を吸うって噂だ」

「目的は?」

「魔女を追い出せば、あの廃区画に眠る財宝が手に入るって……そう説明された。けど、何もなかったんだ。俺たちは、ただハーン様の命令に……お願いだ、許してくれ!」


 男は今にも泣き出しそうな声で、必死に懇願してきた。


  「つまり、元・第一皇子である兄さんの命令だと言うのか?」とマルクが尋ねる。

「お前の口から“兄”などと。不愉快だが……まあ、許してやろう。ミハイル様のご意向だ。必要なら、書状でも見せてやるが?」

 ようやく、ハーンがここまで強気だった理由が見えてきた。

「……だが、兄は病に伏しているはずだ。それに、すでに皇帝ではない」

 本来、第一皇子ミハイルが帝位を継ぐはずだった。彼には支持者が多く、前皇帝の代から仕えてきた保守派の貴族たちは、こぞって彼に忠誠を誓っていたという。

 カリスマ性もあると聞くが、俺たちは未だ彼の姿を直接見たことがない。

「くっ……」

 ハーンは悔しさを噛み殺すように唇を噛んだ。

 俺はナッシュ兄妹にハーンの屋敷を調べさせている。ルクスも同行させた。おそらく、途中で食事でもして、のんびり帰ってくるだろう。何か食べ物を頼んでおけばよかったと、今さら思う。

「だが、この命令は昨日今日の話ではない。ファウストの活動を支援せよという指示を受け、我々はそれに従って動いていたに過ぎん」

「嘘をつけ。じゃあ、なぜ魔女との契約を破った? あれは皇帝と正式に交わされた協定だったはずだ!」

 魔女と皇帝家の間で長年結ばれていた不可侵協定。それを一方的に破棄するのは、州知事としての権限を明らかに超えている。

「……」

 ハーンは、口を閉ざしたままだった。

 仕方なく、俺たちは州兵長を別室に連れ出し、取り調べることにした。彼は、打って変わって饒舌だった。

「つまり、あの刻印はファウストの命令か?」

「ああ、魔女避けのためだと聞いた。ファウストが作った刻印で、俺たち兵士にも全員押されてる。……でもな、貧民の連中に押されたやつは、魔力を吸うって噂だ」

「目的は?」

「魔女を追い出せば、あの廃区画に眠る財宝が手に入るって……そう説明された。けど、何もなかったんだ。俺たちは、ただハーン様の命令に……お願いだ、許してくれ!」

 男は今にも泣き出しそうな声で、必死に懇願してきた。

 

 だが、腑に落ちなかった。なぜ、そこまでして“魔女”を排除しようとする? 本当に、ただの財宝目当てか?


 この刻印には、単なる抑止とは違う、搾取の意図がある。明確な意志をもって魔力を吸い上げる仕組み。


 ヤワタノオロチ。あの、底知れぬ魔力の正体が見えた気がした。

 魔女は、自ら牙を剥くことはなかった。そう知っていて、彼らはその優しさにつけ込んだのだ。だが――その先に待っていたのは、代償だ。


 魔女の力が衰えた今、空いた隙間に悪魔が顔を出し始めている。

 あの廃区画には、まだ何かがある。魔女の住む場所に、何かが。

 とりあえず、全員の衣服を脱がせ、刻印を確認し、削り取ることにした。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ