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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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激戦 2

「くそっ! どんな仕掛けになっているんだ!」

 目の前のオロチは、まるで脱皮でもしたかのように、傷一つない新しい首を生やしていた。


「このままじゃ町が全滅する。砂漠に誘導するぞ!」既に多くの家屋が倒壊している。

 俺はノクスに手早く合図を送った。オロチは、剣を構える俺を警戒して、距離を詰めてこない。

 首をぐるりと回しながら、気まぐれに魔法を吐きかけてくるが、そのたびに俺は剣で弾き返す。オロチは不快そうに顔を歪めた。


 ダークウェルを仕留めたいが、奴はオロチの背後に陣取っている。 

「飛び越えて直接叩くか……いや、ダメだ」

 奴とオロチに挟まれたら、詰む。


 焦りを飲み込んだそのとき、ナッシュ兄妹が砂漠鳥に乗って近づいてきた。俺はすかさずその一羽に飛び移る。

「ナッシュ兄妹、さっきは助かった! お前たちはニコライの護衛に回れ!」

「了解です!」「はーい!」

 二人は町外れの東方聖教会へ向かって走り去った。ハーンたちがニコライを捕まえようと向かっているのを阻止しないといけない。


 俺は砂漠鳥に治癒魔法をかけ、脚力を強化する。

 まずはノクスと合流だ。

 ノクスもまた、増えた首と対峙していた。微弱な魔法弾を遠隔から浴び、苦戦している様子だ。

「ノクス、乗れ!」

 俺の声に気づき、ノクスは屋根から軽やかに飛び降りた。


「近づいてこんから困っておったわ。無駄な魔力、使いたくないしな」

 敵の魔法で、ノクスの服は所々裂け、肌には赤い傷がにじんでいる。

 俺たちがオロチに背を向けると、二方向にいたすべての首が、ゆっくりとこちらを追い始めた。


「リドリー、わしも癒せ。寝るぞ」

「おいおい、戦闘中だってのに……!」

 文句を言う間もなく、ノクスは俺の背に寄りかかり、すぅすぅと寝息を立て始めた。

 思わず苦笑しながら、治癒魔法でノクスの傷をなぞる。


 砂漠鳥を走らせ、遺跡を目指す。

「――この辺りがいいな」

 何もない、砂と空だけのど真ん中。

同時に、それはオロチにとっても、何ものにも遮られない広大な場所だった。うねるように巨体が進むたび、砂の海に大きな波紋が広がっていく。


 ちらりと振り返ると、ダークウェルも別の砂漠鳥に乗ってオロチの後ろから、追ってきている。

 オロチはダークウェルの命令に全て従っているわけではない。

 ――さっきの様子で、それは確信していた。

「どこまで逃げるつもりだ!」

 ダークウェルが、怒声を上げる。


 砂の風が、全てをのみこむように吹き荒れ始めていた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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