悪魔
俺はティアに乗り、王城に侵入した。だが、そこには人の姿はおろか、生き物の気配すら感じられなかった。
「レイラ、どこだ?」
久しぶりに彼女の名前を呼んだ。何度も何度も。
返事は無かった。迷いながら、玉座の間にたどり着くと、そこにはたった一人、レイラがいた。
迷子のように、悲しげな顔をして。快活さも、明るさも失った彼女。
「何で、また来てしまうの?」
「遅くなった。安心しろ、俺は死なない」
魔女の手によって思い出されたタイムリープの前の記憶。悲惨な最期。その場所は、同じだった。
「嘘、何度も何度も私の前で死んだわ」
「話は後だ」
王城の鐘が時刻を告げ、魔物の襲来を知らせた。王城に飛来した魔物、それに空の覇王アイスドラゴン、ティアが応戦した。
王都に迫る魔物の群れに、王国軍全軍が迎え撃つ。
玉座の影から、悪魔たちが姿を現した。一匹ではなく、数十匹。王城やレイラもろとも、悪魔を討つべく、大砲が撃ち込まれた。
長くは持たないだろう。
「この時のために生きてきた」
俺は剣に魔力を込め、最高の火力で悪魔を一刀両断する。
だが、他勢に無勢。取り囲まれ、逃げ場はない。
俺は気にしない。一匹ずつ、確実に、再生できないように仕留めていく。魔力を全身に回しながら。
悪魔はレイラを狙う。俺が背に庇う。
残り一匹となった時、隠れていた悪魔が現れ、レイラを刺した。致命傷だ。
ペンダントが、ぱりんと弾け飛んだ。
彼女の受けた傷は、俺に移動した。
「俺の方が一枚上手だろう」俺は笑ったが、そのまま崩れ落ちた。
「え? なんで! リドリー、死なないで! またやり直しよ!」
ティアが必死に駆けつけ、残り二匹の悪魔を始末した。
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