表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/179

レイラの部屋にて


「皇帝は、部屋から出てきません」


 メイド姿のレジーナが報告した。彼女は、レイラの付き人になりすまし、遅れてきた人員として部屋にいる。すっかりメイド姿にも馴染んでいた。


 他にも、ナッシュやナナが付き人の手伝いという名目で、子供の執事やメイド服を着て、可愛らしい雰囲気を漂わせている。


「料理場で作られた皇帝の食事は、病人食ではなく、普通の大人の食事でしたよね、妹君」

「はい、しかもぺろりと平らげてましたよ!」


 ナッシュ兄妹は、警戒されにくい子供の容姿と持ち前の性格を活かし、皇城内をすっと動き回り、調査を進めていた。


 調理場、警備隊、メイドたちの控え室——さすがに皇帝の部屋には入れなかったようだ。


「子供の来る場所じゃないって、つまみ出されました」

「当たり前だろう!」


 この部屋には、王国から新たに派遣された者として、他に二人がいた。

「モルガン、ヴォルノグラードの様子はどうかしら?」

 その一人、モルガンが答える。「皇帝襲撃の黒幕として、何人かの大臣が逮捕されました。ですが、冤罪との噂もあります」


「じゃあ、市街地で戦闘があったのですか?」

「いえ、まるで計画されていたかのように、襲撃と間をおかずに各大臣宅へ踏み込んだようで、大きな抵抗もなく捕らえられ た様子です」


 レイラは少し考えた後、微笑んでから、もう一人の人物を見た。


 ルクス。白い長い髪と白い肌の、薄幸の美少女は、窓辺にもたれて物憂げな顔をしていた。だが次の瞬間、その表情がふっと消え、別の意思が宿る。

一変し、魔女のノクスが現れた。


「おい、話が違うではないか? なんだ、この格好は? 布教ができると聞いてきたのだぞ!」


 ナナと同じく、子供のメイド服を着せられていることによほど不満を抱いている様子だ。

「似合ってるぞ!」

 俺が揶揄うと、ノクスは魔力を纏い、威嚇する。

「ノクス様、ここは皇城の中です。暴れてはいけません。これもレイラ様の策略です」レジーナが諌める。信者である彼女の言葉は、わりと素直に聞く。いや、彼女だからか。


「そうだな。まあ、ここは我慢しよう。よろしく頼む」すっと、魔力とノクスの気配が消えた。

 ノクスを一人にすると危険なので、レジーナが連れてきてしまったのだ。


「どうせ、暇だ。布教できるか調査でもしに行こうか!」俺はルクスの手を取って出かけようとした。

「ああ、リドなんてことを!」レイラが非難する。慌てて、俺は手を離す。


「え?  あ、子供だから」だが、彼女は俺に非難の鋭い眼差しを投げつけてくる。


「ナッシュ、ナナ。貴方達も一緒に行きなさい」

「はーい!」 「やったぁ!」


ナッシュ兄妹は、ルクスの両手を取って、「まずは、お店を回ろう!」「少しは仕事しないと。他の教会も見に行こう!」どこに行こうかと、楽しげに話し合っている。


 ルクスもにこにこ聞いているが、とても頭の良い子らしく、小さな声で、「地図はどうするの?」「調べた情報を書き留めて行かないと」と話している。


 俺達は、準備を済ませて、部屋を、皇城を飛び出した。閉じ込められているレイラは、とてもつまらさそうな顔をしていた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ