王城
俺はティオスの家を片付けをした。王国から、ティオスに宛てた手紙の束を持ち去った。そして、葬儀と埋葬をした。
彼は自分のことをほとんど話さなかった。最後の最後迄、使命に、彼女に忠実だった。
王都で幸せに暮らしている彼の孫に手紙を書き、妻の墓の隣に墓を建てた。
「じゃあな、ティオス」
俺は彼からもらった物で身を包み、エルダの店に向かった。
「お別れを言いにきた」
「戻っておいで。あら、そのペンダント? 何でもない」
彼女は、まるで不審な物を見るような目で俺のペンダントを見た。
「やはりな」
俺はエルダに自供させ、ペンダントに細工を頼んだ。
「そろそろ王都に向かおう」
途中で魔物も目についたが、無視して王都に向かう。
早く着きすぎると、ティアが目立ちすぎる。だから、計算して動いた。
その日は快晴だった。そして、俺と彼女は十九歳になった。
レイラ女王の戴冠式は、夜に行われることになった。昼から変更された。王城の門は固く閉ざされ、周囲は静まり返っていた。
広範囲にわたり、城への接近が禁じられ、近隣住民は家に帰れず、借宿への移動を余儀なくされていた。
それに伴い、パレードも中止され、翌日に変更された。
俺は、市民活動家達のアジトに行ったが、既に逮捕されていた。
「彼女の思い通りにはさせない」
このために生きてきた。俺は、間違わない。
俺は郊外にティアを隠していた。さらに、先の丘に、多くの人々を見つけた。
そこには、各地から集結した王国軍、王女近衛隊、例の騎士団長たち、そしてかつての同僚たちの姿があった。第二王子が指揮官をしていた。
見たことない数の大砲が、王城に向けられていた。
俺はティアに乗り、夕日が沈む丘に降り立った。
「ここで何をしている? 彼女はどこだ?」
軽いパニックが起こったが、静まると顔見知りの者たちがやってきた。
「姫様は王城に、一人で囮になっている」
彼ら、彼女はみんな泣いていた。
「レイラ様のご命令でここにおります。我らの使命は、これから起こる魔物襲来に備えること」
騎士団長は肩を震わせ、涙をこらえていた。最悪の作戦、それでも最善の策だ。
「ああ。だが、俺は好きにやらせてもらう。運命から俺が救う」
「頼みます」
そこにいる全員、第二王子ですらも、俺に頭を下げ懇願した。
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