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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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帝都への道中


 国に入ると、アレクセイの馬車の周りには帝国旗を持った兵士が、レイラの馬車の周りには王国旗とレイラの紋章旗を持った兵士が取り囲み、軍列をなしていた。


 その数は数千にも及び、これがアレクセイ皇帝の率いる直属の皇帝親衛隊らしい。しかし、決まった服装はなく、各地の土豪の集団のように見え、色とりどりの鮮やかな衣装が目を引いた。


 ゆっくりと進む軍列の周りには、近くの村々から人々が集まり、一目見ようと押し寄せてくる。王国では遠慮して道中を邪魔しないようにしていたのとは大違いだ。


「レイラ様、お顔を一目お見せください!」

「これ、お花! 摘んできたの! レイラ様に!」

「レイラ様のおかげで、生き延びれました!」


 民衆は声を上げ、熱心に彼女に訴えかける。邪険にしようとする兵士を制して、レイラはそのたびに優雅に対応していた。彼女は、この帝国において、飢饉を救い、疫病の流行を防いだ救国の英雄である。属国にしたとか、そんなことは民草には関係なかったのだ。


 街道沿いに開けた野営地が見えると、レイラは俺に合図を送る。

「リド、馬車に乗り疲れたわ。ここで休憩しましょう」

「わかった」俺は他の馬車にも合図を送り、馬車を止めると、扉を開けてレイラを降ろした。

「あああ、レイラ様のご尊顔を!」

 

 民衆が跪き、彼女を見上げる。近寄ろうとした子供が兵士に止められかけるのを、俺は手で制した。

「大丈夫だ。俺が見ている」兵士たちは、俺の視線を感じて静かに頷く。

「よろしくお願いします」

 レイラのもとには、花や果実、村の特産品が次々と献上される。

「受け取ったものは、危険の確認をしてからレイラに渡す。それで良いな?」

 村人たちは納得したように頷く。

 

 そのとき、アレクセイが馬車を降りてきて、周囲の視線が一斉に彼に集まった。

「おおお、新皇帝アレクセイ様だ!」

「立派な皇帝だ、我が国を豊かにしてくださる!」

「レイラ様とお似合いだなぁ」民衆は歓声を上げ、アレクセイを称賛し、互いに語り合っている。

 アレクセイはレイラに熱い視線を送りながらも、民衆とも気さくに話をして、彼の周りでは笑い声が起きている。


「ねえ、リド。赤ちゃん可愛いわね。私も欲しいわ!」

 いつの間にか、レイラは抱いてほしいと頼まれた村の赤子を抱き、微笑んでいる。その表情は穏やかで、周囲の雰囲気を和らげた。

「そうだな」俺は少しはにかんで答えた。

「レイラ様、ありがとうございます……!」

 母親らしき女性が涙を浮かべながら、深々と頭を下げる。

「とても可愛らしい赤ちゃんね。元気に育ってね」

 レイラは赤子を優しく母親へと返し、微笑んだ。周囲の民衆はさらに感極まったように声を上げる。


「アレクセイ様! レイラ様! どうぞお幸せに!」

 村人たちは口々に感謝を述べ、アレクセイとレイラを見送った。俺は彼女の手を取り、馬車へと戻るよう促す。村人達の誤解に、その時、俺達は気に留めなかった。


「行こう、レイラ」

 晴れ渡る帝国の空の下、軍列は再び整然とし、ゆっくりと行進を始めた。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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