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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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帝国の皇帝

「おい! エルダ。出かける前に吸い取っただろうが! しかも大量に!」


「そうだったかな。わしもいろいろと魔力を使ってしまってな。普通は、お前みたいに無尽蔵に湧いてくるものではないからのう」


 エルダはしらばっくれているが、その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいる。


「まあ、怒るな。その代わり、お前の欲しがっていたものをやろう。貴重なものだぞ」


 そう言って、エルダが机の上にすっと置いたのは、例の指輪だった。


「おお、これが欲しかったんだ! これで、レイラを守れる」


 俺は指輪を拾い上げ、大事にポケットへとしまった。


「ははは、わしに感謝するがよい。魔力を吸い取るときに、すでに設定しておいたからな。だから文句は言うな」


 俺は街での買い出しを早々に済ませ、家へと急いだ。


 レイラに会いたかった。いや、それだけでは足りない。会うだけでは満たされない。


 家に戻ると、レイラはつまらなさそうに椅子に腰掛け、ぼんやりと外を眺めていた。しかし、俺の気配に気づくと、顔を上げてこちらを見た。


「遅かったね」


「悪い、ちょっと色々あってな」


 そう言いながら、俺はポケットから指輪を取り出し、レイラの指にはめた。


「氷雪の魔女ね、そういえば顔色が悪いわ。ゆっくり眠って」


「いいや、反対だ。今日はお前を眠らせないよ」



 氷雪島にも、長い冬が終わり、春が訪れていた。

 ヴァルターク王国の属国である帝国もまた、内戦状態に陥っていた。皇帝が亡くなり、後継者争いが続いていた。


 皇帝の突然の死には、連合王国や悪魔の影響も疑われたが、真実は不明のままだ。


 疫病の流行や大飢饉を、王国の援助によって救われた帝国は、レイラの指導により数年で立ち直った。


「王国として、表だった内政干渉はしない」


 後継者争いには、数多くいる皇太子や皇女がしのぎを削っていた。


 だが、勝ち上がり、皇帝の座に着いたのは、母親が身分の低い極東出身の末子であった。名は、アレクセイ。


 ヴァルターク王国東部侯爵オルフィン侯爵が影で援助していた第二皇子は、戦いに敗れて亡命してきていた。


「ドラゴンが現れて、我らの士気を砕いたのだ」第二皇子は、優秀な男ではあるが、そのように言い訳をした。


 ティアが、そんなことをした事実は無い。別のドラゴンだろう。ドラゴンを従える皇帝。


 そのアレクセイが、ヴァルターク王国にやってくる。


「リュカ国王からも、同席して欲しいって言われてるのよ!」


 全ての指示を、水晶玉を通じて行ってきたレイラが、深い溜息をついて俺に言った。


「何の用件だ?」

「ヴァルターク王国からの独立かな?」


 しかし、その会談で、皇帝アレクセイから出された言葉は、予想外のものだった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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