秘密会議 2
「それでは、共和国の状況はどうだ?」
「セラから、ご報告致します。妹君のいらっしゃるソレイユ侯爵領は、王国を歓迎しています。しかし、旦那様のソレイユ侯爵自身は、共和国の首都、パリオンに軟禁されています」
「……軟禁とは穏やかではないな。やはり共和国は内部分裂を抱えているのか?」
共和国の政治体制は、貴族院と平民院の二院制だ。これは、かつて平民たちが中心となって倒した国王に由来している。
ヴァルターク王国との同盟に関しては、もともと反対の声が多かった。国家体制が異なること、何よりも、ヴァルターク王国から提示された条件が、軍隊を支配される不平等なものであったからだ。
「これでは、我らには自由が無いではないか?」
「我々は、新たな王など望んではいない」
「だが、断れば戦争だ。あの巨大な軍隊に勝てるのか?」
貴族の一部や平民院の大部分は反対していたが、知識人や商人たちは冷静に考えていた。
「疫病の際、無償で薬を提供してくれた」
「レイラ王女の政策は、革新的ではあるが、その多くは正しい。実際、王国民の暮らしは豊かになっている」
「自分たちの利権が脅かされるのを恐れているのだろう」
そこで動いたのが、マリスファイア侯爵領に接する土地を持つマルキ・ド・ソレイユ侯爵だった。
彼はレイラ王女と連絡を取り、彼女に両院の議会で演説をさせた。誰にでもわかりやすく、「このままでは共和国の未来が危うい」と語るその演説は、驚きと共に迎えられた。
いや、彼女の言葉を聞く者は引き込まれ、『この人間に逆らってはいけない』と本能的に感じ取ったのだ。そして、同盟は結ばれた。
「クレオン提督、連合王国の動きはどうだ?」リュカ国王が尋ねる。
「ははは、この間、偵察に来た船を追い返しました。壊滅してから、海軍再建中らしいです。しばらくは、動けないかと」
「それなら、共和国は放置しましょう」レイラが冷たく言った。
「珍しいな、首を突っ込むとばかり……」俺が驚いて、声を上げたが、他の人間もそう感じていたようだ。
「リド! おせっかいな人みたいに言わないで。表向きよ、セオはしばらくそこに居てね」
御前会議は、その話題でほぼ終わったが、その後も、レイラは色々な会議に駆り出され、机の前を離れられないようだ。
「レイラ、少し出掛けてくる。ティア行こう!」
俺が扉を開けると、ティアは、擬態の鳥の姿から一瞬で、立派なドラゴンの姿に戻った。
「えー。ティアも? お昼には帰って来てね!」レイラの見送りをうける。
俺は、島の近くの街。魔術師の館にエルダを訪ねることにした。
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