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嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

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秘密会議 1

 それから、数ヶ月。


 氷雪島には本格的な冬が訪れ、俺はレイラと二人で小屋に籠る生活をしていた。

 吹き荒れる氷雪が小屋を揺らす。冬への備えは万全で、食料や燃料も十分にある。何度も極北の町だけでなく、ティアと共に各地に出かけ、買い揃えてきたからだ。

 小屋の中は、彼女の屋敷から持ち込んだ家具や調度品で埋まり、以前の殺風景さはすっかり消えていた。


「なあ、レイラ。そろそろ定時連絡の時間じゃないか?」俺は朝食の片づけをしながら言った。

「もうそんな時間なの……」  彼女は寝衣のまま、小さくなったティアとテーブルゲームに興じていたが、それを中断し、面倒くさそうにこちらを見た。

「わかったよ。準備するから、きちんと座って」

 俺は机の上に散らばるものを片づける。

「ああ、勝ってたのに!」


 レイラが考案したテーブルゲーム──大陸大戦シミュレーションゲームだ。王国軍対連合王国、悪魔軍という構図。まったく、悪趣味なゲームだ。

「ごめんよ!」  素直に謝っておく。怒らせると厄介だからな。ティアはノーゲームになったのを喜び、俺の肩に飛び乗った。

 俺は水晶玉を取り出し、魔力のまったくない彼女の代わりに魔力を込める。


 ヴァルターク王国国王のリュカから渡された連絡用の魔道具だ。冬の氷雪島は、伝聞鳥が辿り着けない可能性があるため、特別に支給されたものだった。


「レイラ様、聞こえますかぁ?」  明るい声はレジーナだ。定時連絡を行うのは六箇所。そのうちの一つ、マリスファイア侯爵領からの通信だった。

「聞こえるわよ! 朝から元気ね。旦那様もお元気なのかしら?」

 レジーナはモルガンからプロポーズされ、婚約中だ。

「も、モルガンです。変わりはございません」  少し疲れたような声だ。


「まったく、こいつらときたら、盛りのついた猫のようで困る。我が教会の指導者として、模範を示さんといかんのに!」  暗黒の魔女ノクスもその場にいるようだ。


「ノクス、ヴァルターク王国の秘密会議ですから、立場をわきまえてくださいね」

「わかっておる。だが、連合王国の連中がマリスファイアに上陸することはない。安心しろ! 我が教会に近づくことは許さん」

「兄さん、おめでとうございます!」  若く小さな声は、レメリア王国の次期国王モルグだ。領民に慕われていると聞く。湖の漁獲量が増え、景気も良いらしい。旅に出たはずの湖畔の魔女がふらついているという噂もある。


「ありがとう。お前もしっかりやれよ!」  モルガンはいつもの厳格な口調になった。

「海軍提督クレオンだ。海賊島に戻って来ている。御前会議に参加させて頂く」

「王国騎士団長セオです。共和国より参加いたします」

「揃ったな。では、会議を始めようか」


 国王リュカの号令で、会議が始まった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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