表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきレイラ 時をかける魔女と幼馴染の物語  作者: 織部
嘆きのレイラ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/251

侯爵と地下聖堂

「もう大丈夫だ、警備と介護を頼む。それと、ルクスを保護しろ」


 不安げに遠巻きに見つめる騎士団員たちにレイラを預け、俺は教会へ向かった。

 

 教会の前では、モルガン、レジーナ、そしてマリスフィア侯爵が対峙していた。

 侯爵は手を振り上げ、叫ぶ。「降参だ、もう戦うつもりはない!」


 だが、その手のひらがじわりと黒く染まる。土の中から何かが蠢き、腐臭が漂った。

 それが新たなゾンビ兵を召喚する前兆だと理解するのに、時間は必要なかった。

 侯爵の足元で土が隆起した――その瞬間。


 モルガンは静かに一歩踏み出した。

 その動きは鋭く、無駄がない。レジーナの補助魔法も上手く付加されている。


 一閃が侯爵の胸を貫く。侯爵は一瞬、言葉を失った。

 驚愕の表情を浮かべる暇もなく、その無力な体が崩れ落ちていく。

 モルガンは無表情のまま、ゆっくりと剣を収めた。レジーナとともに俺の方を見て、にやりと微笑む。


「見事だ。俺の出番がなかったな」俺は騎士団員からレイラを受け取り、抱きながら深く息をつく。


「さて、教会に入ろう」

 中は土で汚れ、ゾンビ兵によって殺された警備兵が転がっていた。侯爵の部屋には、何もなかった。


 目を覚ましたレイラが、俺に抱きつきながらモルガンたちに指示を出す。

「教会を綺麗にしなさい。ゾンビは焼きなさい。この部屋を徹底的に調べなさい」

「御意!」


 騎士団員たちが素早く分かれ、作業に移る。

 侯爵のいた部屋からは、連合王国との間に交わされた密約の書面を発見した。

 だが、連合王国とのやり取りを記した手紙は、すでに焼かれていた。


「レイラ様、ここに地下への入り口があります」レジーナが声を上げた。

 祭壇の裏だけ、岩が敷き詰められており、引き手の跡が残っている。

 俺はその岩を素手で砕いた。


 バキッ! 岩が割れ、奥へ続く階段が姿を現す。

「行こう!」


 モルガンを先頭に、俺はレイラを抱いたまま進む。レジーナがルミナの手を引き、後に続いた。


 そこは地下聖堂だった。空気はひどく湿っており、壁に触れると冷たくざらついていた。


 壁には古びたレリーフが彫られ、かつて信仰を集めた神の姿が刻まれている。

「おお、これは……」モルガンが声を上げ、レジーナが動揺の表情を浮かべる。


 異教徒の神を祀る、隠された場所。今の教会によって弾圧された、忘れられた信仰の跡がそこにあった。

 奥には厚い蓋の棺があり、僅かに開けられた跡がある。


「この人が、ノクスの前世なのだな。哀れなものだ」


 だが、その死体は全身が切り刻まれ、見るも無惨な姿だった。

 そこには慈悲のかけらもなかった。無邪気な残酷さが、無自覚な悪意が、支配していた。


「見るな!」

 ルクスの中のノクスが目覚め、叫ぶ。魔力を纏った風が彼女を覆う。


 彼女の中で何かが疼き、爆発しそうなほど膨れ上がる感情が溢れ出して、彼女を支配しているように見える。

「暴れると、この地下聖堂が壊れるぞ」


 俺の一言で、ノクスは少し冷静さを取り戻し、風は止んだ。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ