体育祭その2
「先生ー、俺がでる競技分かります?」
「そういえば2個しか登録されてなかったな。もう1つは二人三脚だ」
「二人三脚ってことはペアがいるんですよね?誰ですか」
「えーと誰だっけ?忘れちゃった。」ニコってしてて少しかわいいから許しちゃう。いや許す許さないじゃないわ。
「困りますよー確認してください」
「名簿取りに行くのだるいし、ワクワクの要素があった方がいいだろ?大丈夫だって、ペアの子から話しかけてくれるよ」
「いやいや取ってきてくださいよー」
「5分後に借り物競争始まるけどこんなところにいてもいいのか?」
「いや良くない。今すぐ行く」
(不戦敗とかありえない。MVPが…)
全力疾走で集合場所へと向かう
「退学にならないようがんばれよー」
競技開始2分前につく
「えっと、日高くんですね。次からはもう少し早く来てくださいね」
「はい」
「それではルールを説明します。紙に書いてあるものを持ってゴールに行く!以上です」
アバウトだが他に説明することもないんだろう。
まぁ俺は3レース目だし先のヤツらのお題でも聞いとくか。8人ずつ走るのか。1位を取ればそれなりに目立てそうだ。
1レース目が始まる
「よーいドン」
お題は財布、友人、3年2組の生徒、手持ちファン、うちわ、水筒、扇子、滑らないギャグ
なるほど扇子はハズレ。友人などは連れていきやすく、自信があるならギャグが最速だな
2レース目
犬、腕時計、校長、2000円札、メントスとコーラ、フィギュア、芸能人、通帳
ん?なんか難易度急におかしくね?
こんなの校長と腕時計の一対一だろ。
だが勝ったのは芸能人、どうやら本人がそこそこテレビにでてる芸能人だったらしい。あんなやつうちの学校にいたんだ。
3レース目いよいよ俺の番ここであることに気づくこれが最終レースだということに、これは難易度鬼じゃないか。ペンギンとかだったらどうしよう南極まで取りに行かないとじゃん。
「さぁーいよいよ最終戦よーいドン」
紙をめくる。ここが運命の分かれ道
めくられた紙に書かれていたのは
『すきなひと(likeじゃなくてLoveね!異性のみ)』
「ふぅー、いいセンスじゃん」
ヤバい、さっきまでの試合を見た感じゴール前でマイクでお題を読み上げ見てる人全員が確認するという地獄の儀式がある。こんなの公開告白だろ。体育祭実行委員は反省しろ。
周りのやつもみんな紙を見てフリーズしている。
ブツブツ聞こえてくる声にホワイトタイガーだの総理大臣などと聞こえてくるが運営頭狂ってるだろ。
「皆さん紙を見てフリーズしてますが、誰かがゴールするまで続きますよー」
おそらくゴールできる可能性があるのは俺だけだ。だがあまり仲良くない女子にやると相手に好かれても困るし、ふられても傷つく。そうだ美乃里だ。
当たりを見渡すが近くにいない。他に知ってる人はいないか。あ、篠原葵。話が通じないあいつならこのお題の意味も理解できない。この際知らない奴にどう思われようがゴール優先!
「篠原ついてきてくれ」
「誰?」
「日高、借り物競争中でお前が必要なんだ」
「あなたが…え!」何か話そうとしていたが時間がないから手を引っ張ってゴールへ連れてった。
あの司会者もどきがニヤニヤしながらこちらを見ている。おそらくお題を知っているのだろう。
「さぁ〜、おだいの発表をお願いします」
え?さっきまでお前が読み上げてただろ。
まぁ周りは賑やかだし誰も試合なんて見ていない。マイクの音量的にも平気だろ、
「ス、好きな人」賑やかな外野が一瞬で静かになる。
おい!なぜか俺の声だけ爆音で流れたぞ。放送委員でてこい
「好きというのはlikeですか?」
この女自分でお題書いといてそれを聞くのかよ
「ら、ラブです」
「お題たっせーーーーい。3レース目1位は日高、篠原ペアでーーーす。」
大声で名前を晒された。これで俺に似てる他人通称ドッペルゲンガー作戦もつぶされたな。
1人また1人と拍手が連鎖されていき、やがて全校生徒に拍手された。もうお嫁に行けない…
「ほんとごめん」
「何が?」
「いやさっきの別に好きってわけじゃないんだ」
「ラブなんじゃないの」
「いやそんな事はない」
「まぁいいわよ。気にしないで、でも私から振ったことにするからね」
「なんでもいい、すまない」
「でも軽い気持ちで好きとか言わない方がいいわよ。私じゃなかったら傷つくもの。」
だからお前を選んだんだよと言いたかったが、会話をしてみると普通の女の子で申し訳なくなってきた。
「まぁ二人三脚は2人で頑張りましょ」
この言葉をさばくには脳のリソースが足りないから聞かなかったことにする。
篠原が立ち去ったあと俺も歩き出す。
「拓真ー!」
「快星…」美乃里が走り出し姿を消す
「美乃里はどこいったんだ?」
「な…次の種目が近いことを忘れてたっぽい」
「そうか、そんなことよりさっきはどこにいたんだ。美乃里を連れていこうと思ったらいなかったんだけど。」
「お前のゴールするところを見ようとゴール近くに移動してたんだよ」なんか軽く怒ってるような気がする。なんか俺悪いことしたかな?まさか拓真、篠原のことが好きなのか
「安心しろって別に篠原のこと好きじゃないし、協力してもらっただけだから」
「ちゃんと説明したのか」
「おう、さっき説明したぞ。本当は美乃里の方が良かったんだけどねー嘘ってわかってくれるから。」
ボゴッ!痛い殴られた?
「快星、もう話しかけてくんな」
なぜ殴られたんだ?なにか怒らせることをしたか?
数分前
「快星1番でゴールできるかなぁー」
「どうだろうな。最後は多分すごいお題が来るだろうから」
「親友とか好きな人とかであたしたち呼ばれたらどうするー」
「照れるな」
「顔真っ赤じゃーん。拓真はかわいいなぁ」
「よーいドン」
「始まったね。」
「全員フリーズしてるな、どんな内容なんだろうな」
「南極のペンギンとかなんじゃない」
「1年あってもきついだろ」
「そうね。キョロキョロしだしたけどお題は何なのかしらね」
「走り出したぞ。あれは篠原さんか」
「あーまぁ頭がいい子、運動神経がいい子、可愛い子、なんでもあてはまりそうね。」
「でも最終戦そんな簡単か?」
「さぁ〜、おだいの発表をお願いします」
「ス、好きな人」
「おい、美乃里大丈夫か」
「大丈夫、大丈夫、気にしないで」
「好きというのはlikeですか?」
「ら、ラブです」
「あはは、恋愛対象にされてないのは察してたけどいざこうなると辛いね」
「…」
「気にしなくていいよ。目から多分、涙がでてるけど悲しいんじゃない。悔しいんだ。7年も一緒にいてどうしてあたしはたった一言…たった一言好きって言えなかったんだろうね」
「拓真ー」
「快星…」
あたしはここで逃げ出してしまった。まだ何かできることがあったのかもしれないけど、今の顔を見られたら今までの関係にも戻れない。そんな予感がして…