体育祭その1
我が校の体育祭の組み分けは独特だ。
箱の中に赤、白、青、黄の4種類の色のボールがそれぞれ10個ずつ入っている。ここで引いた色で組み分けをするためクラスで4分割されてしまう。
「拓真〜何色だった?」
「青、美乃里も青って言ってたぞ。快星は今からか」
「そうなんだよ。まぁ4分の1を引き当てられるのが俺なんだけどね」
教卓の上の箱に手を入れ中のボールを触る。どれも同じように感じたが、一つだけ少し小さい玉が入っている。これだな
「ハハ、白だねこれ」
「快星、お前運悪いよな。」
「運だけは自信あったのに」
「まぁ、お互いほどほどに頑張ろうぜ」
そういえば授業前に川島先生なんか言われてたな。確か
「日高、今回の体育祭で個人MVPを取ることができればお前が退学になる可能性はほぼゼロになる。私が何を言いたいかわかるか?」
「いいえ!まったく」
「勝てと言っているのだ。どんな手を使ってでも」
「イエス、サー」
「女性に言う時はイエス、マムだ」
こいつ俺のマムじゃなくね?って思ったがここでは言わないでおこう。
「悪いな、拓真今回は全力で行かしてもらうぜ」
「オーキタイシテル」
ボー読みな気がするが細かいことを気にしないのが俺の生き様であり人生
「とりあえず白組が勝つことは大前提だ。白組で運動神経良い奴って誰かいる?」
「篠原さんは女子の中で1番運動できるぞ。多分快星よりも運動神経いい」
「ちっ、味方かと思ったがライバルか」
とは言っても例年優勝した組からMVPが選出されてる。優勝しなければ話にはならない。だから強いひとがいるのは嬉しい
「それにしてもなんの種目でよっかなー。1人3種目だろ」
体育祭の種目の中で3種目も特に運動神経が良くない俺が活躍できる競技を探すのかよ。
まて冷静に考えろ
騎馬戦…多分下になるからあまり目立たない
玉入れ…競技自体が地味
綱引き…誰が活躍してるのか分からん
組対抗リレー…活躍するならここだが体力がなさすぎる
「なぁ拓真、俺って何してもダメなやつだよな」
「どうした!?」
これまでの経緯を全て話した。
「なるほど、なら2つはオススメがある」
「なになに?」
「借り物競争と障害物競走。これなら運があれば何とかなるだろ」
「借り物はいいな、障害物はきついかもな」
「いや向いてると思うぞ。快星結構、すばしっこいし変な細道とか使いまくってるだろ」
確かに、普段から俺ほふく前進で廊下歩いたり地面から生えてるよく分からん鉄のポールを馬跳びみたいに飛んだりしてる。
「よし、これで2勝だな」
「早い早い早い、あと1種目は自分で決めな」
「おう、分かった」
それから1週間後体育祭本番
「よーしこの日がやってきたぞ。拓真、美乃里!気合い入ってるかぁー」
「「おー」」
ん?でもこいつら敵じゃん
「すまん、今のなしで」
「どういう情緒!?」
「いやー敵に塩を送ったてきな」
「そういえば最後の1種目は何にしたんだ?」
「?」
「なんだよその?みたいな顔は」
そういえば2種目しか登録してない……冷や汗が止まらない
「まさか快星、2種目しか登録してないの?残り余り物になっちゃうじゃない」
「あーもう。残り物には福があるんだよ」
「2人は何に出るんだよ」
「俺は組対抗リレー、100m、障害物競走だ」
「あたしは玉入れ、騎馬戦、ドッチボールよ」
へ〜、え?ドッチボールなんてあったの。避けの日高と呼ばれたこの俺様がでれない。おわあわ
しばらくフリーズしていると
「快星、快星、聞こえてるか?あ、起きた。先生に確認取ってこいよ。何になったか」
「そうだな。でもその前に1種目行くか」
「あぁ障害物競走だろ」
「頑張ってねぇ、拓真ー快星なんかに負けないでよ」やっぱ仲良いよな
1種目障害物競走
1レーン…俺
2レーン…拓真
3レーン…サッカー部の田中みたいなの。佐藤だったかも
4レーン…メガネの身長低め
まぁ俺の余裕勝ちかな
「位置についてよーいドン」
合図とともに走り出す。まず最初に目の前に出てきたのは跳び箱だ。
「なめんなよ」4つ並んでいるのをぴょんぴょん飛び跳ねている。そこそこ長いな。
横の3人は跳び箱を飛ばずに跳び箱の上を走っている。結局飛ぶスピードは早かったものの3位で跳び箱ゾーンを抜ける。
次はハードルゾーン。
ふっ対策済みだぜ。飛ぶことはなく全てのハードルを倒しながら進んだ。ここで1位におどりでた。だけどみんな結構痛いから真似しないでね。
ネットゾーン
「ふっ、ほふく前進は得意なんだよ」
「お先にィー」メガネのやつゴキブリなみの速さで抜けていったぞ。
「快星追いついたぞ。」ここで後ろ3人はほぼ並んだ。1番はメガネだ。
次のところでメガネが止まっている。あれは…
輪投げだ。入るまで進めないのか
「これは得意な気がする。」
「悪いな」拓真は走りながら輪投げを成功させ一気に1位なった。俺は全然得意じゃなくて外しまくっていた。
「やっと入った。あれ」周りは誰もいない
麻袋ゾーン
もう俺以外誰もいないがなんなくクリア出来た。
残りはあと3箇所。
パンゾーン
「ラッキー」全員がまだぴょんぴょん跳ねていた。
「狙った獲物は逃がさないぜ」決めゼリフを言いながら一発でパンを口で取り。進んだ
「変な才能凄いな」はねながらなんか言ってるが待ってやるほどこっちも余裕は無い
「え、タイヤ引きってまじ?」何に使うんて大きさのタイヤを3個括り付けられた。
「まっっったく進まない」たった10メートルなのに永遠のように感じる距離だ
田中くんと拓真に追いつかれたが2人も苦戦している。
「これ設計ミスだろ」
たかが10メートルを抜けるのに1分以上かかってしまった。
ラストは大玉転がし
「おらぁぁぁぁぁぉ」勝ったな。
「快星ーがんばれー」ゴール前にいる美乃里の熱い応援も届いているぜ
後ろからすごい音が聞こえる。拓真だ
「拓真ー俺に花を持たせろー」
「悪いが俺も全力でやるって決めたんだよ。」
「うわぁぁぁ」
ゴール直前にはほぼ追いつかれた。ゴールした時俺の目からはどちらが先かは分からなかった。
「審判どっち?」
「少々お待ちください」
ビデオを見ている。今の時代体育祭でもVRあるのかよ。
「ボールは先に神田(拓真)が入ってますが、体の一部が先にゴールしたのは日高ですね」
「よっしゃーー」
「おめでとう、来年は負けないからな」
「おう、でも来年は仲間がいいなぁー」
美乃里走ってくる
「2人ともおつかれー、はいこれ」
スポドリを渡され飲む
「なにこれ!めっちゃ美味い。なんてやつ?」
「美乃里の手作りか?」
「正解!昨日の夜作ってみたんだぁー」
「お前天才だよ。特許とって売り出せ」
「ありがとう、喜んで貰えて何より」
「それはそうと快星は早く先生に種目聞いてこないとだぞ。もしかしたら次の綱引きかもしれないんだから。」
「確かに、じゃあちょっと聞いてくるー」
「悪いな、本当は俺がいない方がいいだろ」
「ううん、快星のことは好きだけど、拓真のことも好き!だから3人でいる時間を大切にしたいの」
「そうか、ありがとうな」
「何よ、ありがとうって」