ありきたりな勘違いと駆け足なTS
私が拗らせすぎていて、欲しいコンテンツが不足している。
だから作る!
俺は、自分のいる窓際の席が嫌いだ。
水曜日の三時間目は特に嫌いだ。
窓の外で、楽しそうにしている水野を見るのが嫌いだ。
そんな自分が心底嫌いだ。
チャイムの音が聞こえる。時計を見ると12時半を迎えており、ただボーっとノートを取っていだけで授業が終わってしまった。数学は嫌いではないが、今回もまた集中できなかった。
「おーい」
すぐ後ろの席から、耳なじみのある声が聞こえ、いつものように財布を取り出した。
こっそりと深呼吸をする。
「食堂行くか」
少しトーンを上げて声を出す。こんなダッサイことを考えていたなんて知られたら堪らない。陰鬱な気持ちを悟られないために動きも少しハキハキとさせておこう。
「……なんかあったか?」
「いや別に何も?」
しまった。逆に不自然になっていたのかもしれない。
「あ~、腹減ったわ」
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俺には、自慢はできないが興味の尽きない友人がいる。
名を、筒香 玲夫と云い、陰で呼ばれているあだ名は「ふつつか」。
アナグラムで夫筒香、悪意はふんだんにあるのだろうが、そこは掘り下げない。
筒香にはどうやら、好きな人がいるようだ。
三組と四組が外で体育をしているとき、あんまりにも授業に身が入っていないし、明らかに一喜一憂している。
少し喜んだかと思うと急にどんよりした空気を出すし、大人しいと思えば、ため息ばかり聞こえてくる。
そんなに叶わなそうな恋もあるまい。
水曜日のたびに黄昏ている様は、鬼太郎のような力強いアホ毛のせいで、なんだかコメディチックであまり絵にならない。
「今日は何食べる?」
「あ~、かけうどんかなぁ」
水曜日の筒香は話しかけると絶対に「あ~」から返事を始める。誰が好きなのか知らないが、分かりやすすぎるだろ。
エロ漫画で言うなら、身体は墜ちてるし、心も墜ちかけで、ドクズ男のことばかり考えてしまう女の子レベルで上の空だ。
「俺もかけうどんにするわ」
「……」
あれ、いつもなら心地よいラリーが返ってくるんだけどな。
返事が遅いことを、不思議に思い筒香のほうを向くと、まるで石像のように固まっていた。
目線を追うと、俺の知っている中で一番性格の悪い女、優香がいた。
目線があった優香はこっちに駆け寄り話しかけてきた。
「あ、ゆーすけじゃん」
「よ、よぉ、久しぶり、久しぶりだな!」
引き攣った顔で、察してくれるように願いながら話す。頼む、お前よりこいつとの仲が大事なんだ。
「朝も一緒に来たじゃん。意味わかんないわ。てか何でふつつか君と一緒にいるわけ?」
チラッと筒香のほうを見ると、困惑と嫉妬と憎悪とその他もろもろの感情を内包した表情で、筒香は立っていた。
あぁ、まただ。また優香のせいだ。
俺と筒香の友情に、亀裂が入った音がした。
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その日のことはよく覚えていない。
まさか祐介が西原さんと付き合っていたなんて、もう明日から学校に行きたくない。
俺、ダサすぎるよ。
あまりの辛さから、最近買ったお守りを胸に抱いて全力で泣いた。そして寝た。
朝起きると、沢山泣いたから意識が妙にすっきりしていた。
胸のあたりに多少の違和感を感じながら階段を降り、鏡の前で歯を磨く。
思い込みかもしれないが、俺の顔には愛嬌があり毎朝癒されている。昨日の夜は、折角泣きまくったんだから、いつもより儚げな顔になっているはずだ。自分でも何を言っているのか理解できないが、傷付いた次の日にはポジティブであればどんな理論でも正当化されるのだ。ただただ自分を肯定してあげたい。
「ん?いやめっちゃ可愛いやん自分」
鏡には、最近のAIが作ったような、現実にこんな美女いないだろというような顔が映っていた。
とりあえず今日は学校をずる休みすることにした。
絵が描ければどちゃくそエロいキャラデザを作ってから主人公についての描写を考えられるのに。くそぅ。