図書館開設前の大問題
忠子は頭を抱えていた。
(ううう……どうしよう)
右大臣から文庫つまりは図書館開設の催促が来てしまったのだ。
企画から建物の建築まではあっという間に進んだ。
元々が忠子がため込んだ本の収納場所という問題から始まったので蔵書数は充分だったし、噂を聞きつけた人々が寄贈してくれている。
(寄贈してくれた人のためにもそろそろ開館しなきゃ。私の物語……その問題さえクリアできれば……)
忠子の私設図書館の名前は忠子の通り名を取って文車亭と決まった。
宮廷内の文書管理部門である図書寮と差別化を図るために、物語専門の文庫とするのも早いうちから決めていた。
しかし宮廷に入るきっかけとなった『竜宮の姫』をはじめとする自分の本を収蔵することにどうしても抵抗があったのだ。
(だって……全部パクリだもんね……)
『竜宮の姫』は登場人物のモデルを徳子と鷹臣にしただけでそのまま人魚姫だし、他も宮廷で評判になったものは小さな姪に語ってあげた眠れる森の美女やシンデレラの書き起こしの流出だ。
知り合いの間で回し読みされ、いつか消えていくならいい。
(名作のパクリだから語り継がれるポテンシャルや普遍性があるんだってば、もし万が一後の世に残っちゃったりしたら……!)
後世の歴史家がおおいに頭を悩ませることになる。
盗作で宮廷に上がってしまっただけで申し訳なさすぎるのに、そんなことになったらどうしたらいいか分からない。
考えても考えても答えが出るわけではなかった。
そこへ持ってきての、右大臣からの催促である。
(織子様のことがあったからだよね……)
織子は順調に快方に向かっているらしいが、東宮妃にという話は頓挫している。
とにかく帝位を狙える人物に娘を嫁がせることに血道を上げる平安政界、蹴落とし合いも凄まじい。精神の病の気ありとケチを付けられ余所の姫君に東宮妃の座を奪われてもおかしくはないのだ。
ここでひとつ華やかな功績を上げて話題を逸らしたいというのが目論みなのだろう。
考えに考え抜いて、煙を吹き始めた忠子の頭の中で何かがぶつんと切れた。
「ちょっとよろしいですか、明式部様」
「あら、どうしたの?」
「薬師如来のお札をいただきたいのですけど、どなたかご存じありませんか?」
かつて物語が読みたくて読みたくて仕方なかった菅原孝標女は、等身大の薬師如来を彫らせて一心不乱にお祈りしたそうな。
そのご利益かどうかは分からないが、京にて源氏物語全巻を叔母から贈られている。
(困ったときの神頼みって虫が良すぎるけど、もう私の頭じゃ解決策を考えつかない!)
各所に人脈を持つ明式部にお願いして薬師如来のお札を手に入れてもらい、房に飾って毎朝祈った。
人が宗教にハマるのは、こういうときなのかもしれない。
『この連載小説は未完結のまま約2ヶ月以上の間、更新されていません』
自分の連載の上にこの文言ばあるのを見るのはなかなか心臓に悪かったとです。
うっかり連載ばストップしてしまいましたが、再開しました。
そろそろ終盤ば来とーけん、よろしければブクマ、イイネ、ポイント★付けてくれると励みばなります。




