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作家の憧れ、温泉宿で缶詰執筆

外はすっかり雪景色。

静かなお山の温泉宿(※お寺です)


机に向かえば気分はすっかり文豪ですよ!


食事は中居さん……ではなく、尼さんがお部屋まで運んでくださる。

肩が凝ったり展開に行き詰まったりしたらお風呂に行けばいい。


外出だとか仲良しの女房とのお喋りだとかの誘惑もない。

むしろうっかり不慣れな人間が外に出たらちょっとの散歩で遭難する。


何て執筆に最適な環境。


ちょっとだけ寝ようとごろ寝したタイミングで原稿の進捗確認に来る担当さんもここにはいない。


そもそも忠子の本業は女御付きの女房で、作家ではないのだ。

出仕している全部の時間を執筆に当てられるわけではない。自主残業とか趣味とかそういうレベルで執筆活動をしている。


「はあ……捗る」


またちょっとズルをしている気がするが、白妙に取材させてもらって国内最古(だろう、多分)の婚約破棄令嬢小説の執筆に没頭していた。


「やっぱり小説家って素敵な職業だなあ……才能があればなりたかった」


一気に書き上げた原稿を前に一息つき、数日前のことを思い起こす。



 * * *



白妙と出会った翌日の午前中、バタバタと騒がしい足音が近づいてきた。


「ふ、ふ、ふ、文車太夫ふぐるまたゆう様! て、天女様です! 天女様が舞い降りました!」


慌てふためいて転がリ込んできた老尼僧の勢いに一瞬あっけに取られたが、すぐに思い当たる。


「て、天女様? ……ああ、もしかして白妙さんですか?」

「は、はいっ、そう名乗られまして、文車太夫様が、こちらに滞在……っ、はあはあ……っ、ど、動悸が」

「大丈夫ですか?! 落ち着いてください」


本に夢中になっていて手を付けていないまま冷めてしまったお茶を差し出すと、尼僧はようやく一息ついた。


「ゆうべ露天で偶然お会いした地元の方で、この土地に伝わるお話を聞かせていただくお約束をしたんです。お通ししてください」

「は、はあっ……さようでございましたか、取り乱して申し訳ございません、わたくしも長く生きて参りましたが、あそこまでお美しい方を拝見したのは生まれて初めてで。ああ、有り難や有り難や……すぐにお連れいたしますね」



ややあって案内されてきた白妙は、防寒を重視した服装ではあったが天女が舞い降りたと勘違いされても納得の美しさだった。

髪の一部を上げて頭上でループさせた乙姫様のような髪型をしているのも天女っぽさアップだ。


「お邪魔いたしますね」

「いらしてくださってありがとうございます。今日は眼鏡かけていらっしゃらないんですね」

「人里に降りるときは外しているんです。変にものが見えると厄介事に巻き込まれることも多いので。とは言え長年(あやかし)の世界に馴染んだからか、見えなくても何かいるのは分かってしまうようになりましたが」


見えるけど対処できないという、中途半端に霊感がある人は憑いて来られると大変だから見ないようにしているとオカルト動画で見たことがある。


腰を落ち着けた白妙に宮中で物語を書いていることを話し、白妙の体験談を書きたい旨を申し出る。


「恥ずかしくはありますが……もし、それが人間とあやかしの懸け橋となるのなら……」


そう言って、白妙は快く取材に応じてくれたのだ。



 * * *



「はあ……だらだら過ごすつもりだったのに、有意義な温泉旅行になったなあ。これも徳子様のお陰! 肩も腰もすっかり軽くなったし、みやこに帰ったらまた頑張るぞ!」


決意を新たに心身ともにこれ以上ないほどリフレッシュした忠子だった。


一方その頃、京ではちょっとした悲劇が起きていることも知らず……


読んでくれてありがとうございました!


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