幕間・理知対織子様
「悪かったわね」
「ええ、本当に」
ひと騒動が過ぎ去った後、織子と理知は御簾を挟んで対峙していた。
「別に二人のことを邪魔しようってわけじゃないのよ。だけど今の忠子は地味でもなければ存在感がないわけでもないわ。確かに見た目の華やかさには欠けるけど……まあ、補って余りあるものがあるし?」
織子は視線を下げて発達前のつるぺたに目をやったが、見なかった振りをした。
「とにかく! 理知はイケメンだと思うわよ!? お似合いだともね! だけど文車太夫友の会の会長としては、あんなふうに自分は駄目だと卑屈なまんまで身を固めてほしくないの! 忠子の魅力を一番分かってるのはあなたでしょうが、ちゃんと言ってやりなさいよねっ!」
「ちょっと待ってくださいファンクラブって」
我知らず早口になる理知に、織子は盛大なため息で答え片眉を上げた。
「薄々感づいてるんじゃない? 少なくないのよ、あの子の隠れファン。水面下でこっそり探ってる男がちらほら出てきたから、勘づく度に狙ってるのはあんただけじゃないわよって教えてやってるの。文が届き始めたのはそれからかしらね~え?」
「余計なことを……」
「さっき棗命婦も言ってたわよね。忠子は確かに美人じゃないけど、その分、目をつけるのは違いが分かる男たちよ。ちょっと年齢が高めで家柄も悪くなくて、それなりに経験を積んだ安定感がある方が多いわね。その中にはあんたより温厚で、大人で、忠子のことを理解して温かく守ってくれる優しい公達もいるかもね」
「何ですか、その乙女の理想みたいな男性は……」
「負けたくない?」
「勝ち負けじゃありません」
「ふうん。分かってるじゃない」
織子はにんまり笑って扇子で掌を叩いた。小気味よい音が響く。
「何にせよ、忠子はもうあんたがこっそり囲ってた僕だけが良さに気づいてる娘ってわけじゃないのよ」
「恥ずかしい言い方やめてくださいますか?」
「つまらない恥なんか捨てなさい」
織子の忠告は、ずんと腹に響いた。
「でないと、取られるわよ」
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