世界のはじまり
「ああ、遂に完成した.........。遂に.......。」
「はい。しかし、よろしいのですか....?」
「.......なんだ、まだ迷っているのか?これは私が一生を捧げた夢なんだ。それを共に叶えた仲間に、抱く感情なんて、感謝以外ないだろう。たとえどんな結果になってもな。」
「先生....分かりました。その後はお任せください。」
「ああ、しばらくはお前の...親戚?この場合も親戚でいいんだよな...。とにかく世話になる。本当に申し訳ない。」
「とんでもありません。先生が光栄にも選んでくださったんです。責任を持って伝えていきます...!」
「本当にありがとう。.......じゃあ、さよならだ。ってかお前嫁さんとあんま上手くいってないんだって?そりゃああんな放ったらかしにしてりゃぁ嫁さんも怒るわなぁ。愛想尽かされなかったのが不思議だわ。」
「余計なお世話です。それに、おかげさまでこれからは嫁と過ごす時間も多くなりますよ。」
「そりゃあよかった。じゃ、残りの人生楽しめよ。.....あっでもこっちが安定するまではまだ結構忙しいと思うけど、よろしく頼むな。」
「はい。任せてください。先生も顔見せてくださいね?」
「見せられる顔があるかなぁ....。」
ああ、遂に完成したのだ。私の空想が現実へと成ったのだ。目頭が熱くなるのを感じる。だが、この成果はしばらくは世界には明かされない。私の助手が生きているうちに我々の研究が日の目を浴びることはないだろう。それでも彼は人生を捧げてくれた。彼にどれほどの感謝をすればいいだろう。遺産を全て与えるだけでは到底足りないだろう。これは、人生で何も見出せなかった私にとっての、唯一の希望であり、唯一、心を燃やされるたのだったのだ。