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クリスマスプレゼント

 異性から初めてクリスマスプレゼントを貰ったのは、小学4年生の時だったと思う。


 正確には、たぶん異性からの贈り物であろう。

 いや、男子以外に考えられない贈り物。

 ジェンダーレスの時代にあって、男子だから、女子だからと決めつけて物を言うのはいけないだろうが、小学4年生の私は、男子が用意したプレゼントであると決定付けた。


 クリスマスが近い頃、クラスで「お楽しみ会」が開かれることになった。

 私の母校はクリスマス前になると、どのクラスも「お楽しみ会」と呼ばれる会が催されていた。内容的にははたして「お楽しみ」な会なのか首をかしげる年もあったが、冬休み間近なこの時期は、授業にもこうした忘年会的なイベントが盛り込まれていた。

 歌を歌ったり、お調子者の生徒が人を笑わせたり、ゲームをしたりそんな時間を過ごす。会の締めくくりにはプレゼント交換があって、音楽に合わせてプレゼントを隣に送り、音楽が止まったところで手にしていたものを頂くというプレゼント交換。子供にとっては楽しいひと時だった。


 持ち寄られるプレゼントは、家庭で不要な物やこの日の為に手作りしたもの、鉛筆や消しゴムと言った比較的安価な学用品であることが条件であった。当然、学校だから手作りであってもお菓子などの飲食物は禁止である。だいたいが学用品とか、手芸の得意な女子がマスコットなどを作るケースが殆どであったが、中には千羽鶴とか折り紙で作られたくす玉とか、渾身の作品ではあったが、貰ったらどうしようと思うもの物もあった。(たぶん家に飾るしかないんだろうけど・・・)



 それなりに包装して持ち寄られたプレゼントが音楽に合わせて回ってきて、私の手元に残ったのは、小さいけれど重さを感じる包み紙であった。

 包んである包装紙すべてがセロテープでグルグル巻きにされていた。セロテープでコーティングされた包みと言っていいほどで、テープをめくって綺麗に開けるというのは不可能。

 贈り主の執拗さを感じるラッピングであった。

 このラッピングセンスは男子しかおるまい・・・。当時の私はそう思った。子供だからもしかしたら女子もそういうラッピングしちゃうかもしれないけど、当時の自分の価値観ではそう判断した。



「プレゼントは家に帰ってから開けなさい」

 先生がそう言っていたので、帰宅してからセロテープで固く守られたプレゼントを開封した。

 中に入っていたのは、ロックされた状態の南京錠であった。

 ロックを解除する鍵はない。

 家庭で不要な物を持ち寄っているんだから、鍵があったらその南京錠は使える品物になるので、要る品物になるから、プレゼント交換に出品されるべきものじゃなくなるのだろうが。

 だからって、ロックされたまで鍵がない南京錠って、燃やせないゴミだ。(自治体によっては資源ゴミかもしれないが)

 大人になってから、リサイクルバザーを主催する仕事を頼まれることもある。

 リサイクルバザーであるから、各家庭や店舗などに眠ってはいるが、まだまだ活用できる可能性を秘めた品々が寄せられる。あくまでも可能性であって、必ずしも人に求められる品という訳ではない。中には可能性が限りなくないものもある。

 以前、誰の買い手もなく無料であるにもかかわらず、誰も欲しがらないがために手間を取らせる、大きな豚の貯金箱を私は引き受けた経験がある。バザーに拠出する方もニーズを多少は考えるべきだと悪態をついたことがあった。その貯金箱は最後に私にひどい仕打ちをして捨てられることになった。家庭等に眠る不用品は所詮、不用品なんだとさらに私は悪態をついた。


 お楽しみ会で貰ったプレゼントは、包装の状態から私にとって有益な物が入っているとは思えないと感じ取ってはいた。しかし、このような品物が手元に来るとは予想だにしていたなかったので、酷い衝撃を受けた。

 この頃は、まだ貰ったプレゼントに対して好ましいか否かの衝撃だったが、大人になると期待していたのに貰えなかったという事が多々あって、ショックになるんだということを知らない。

 しかし、大人になってのプレゼントが、解除不可能なロックされたままの南京錠だったら、喜ぶとかショックを受けるとかの話ではなく、贈り主の意図を探るだろう。

 自分に対する好意云々を探る可能性もあるが、どんなメッセージが込められているのか、何に使うのだろうか。ひょっとして特殊な嗜好の持ち主なのかとか。もしかして私を試しているのだろうかと困惑するだろう。

 たぶんその相手との関係は進展しないだろうが、少しだけ相手の精神状態を案じたりはすると思う。




 愛猫へのクリスマスプレゼントは簡単だ。

 猫がときめく、『ちゅ~るっ』としたおやつさえあればひとまず合格だ。

 飼い始めた頃は、様々な玩具を飼い与えたが8割方、猫お嬢様はお気に召さなかった。

 結局は美味しい食べ物である。形が残る物も貰って嬉しいけれど、消えてなくなる物の方が気が楽だなと思う事もある。

 子供時代に毎年両親から貰うプレゼントは、クリスマスの図案がモチーフになっていいる、固くて大きな板チョコだった。B5サイズの大きさはあったと思う。

 本来は割って食べる物らしいが、直に噛みついて食べていたので、おびただしい歯型がついて、固くて簡単には齧れない。半分ほどで食べる気が失せていたが、捨てることも許されず大変だった。食べ物だったら何でもいいという訳でもない。

 大人になると贈る相手への配慮も必要とあって選ぶことも難しい。





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― 新着の感想 ―
[一言] ロックされた錠前、なぜプレゼントになると思ったのだろう。(笑) 「プレゼントを選ぶのが楽しい」というのはおそらく女性ならではの感覚なのだと思います。 男(私)は「どうやって笑わそうか」と考え…
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