第6話。親父(魔王)とセバスチャン(家庭教師兼元世話役)
「セバスチャンよ、もう行ったか?」
「はい。旦那様」
12番目の子供ゲマからの一年の報告を受けた後、魔王は13番目の子供の家庭教師兼世話役のセバスチャンを玉座に呼び出していた。
「ゾーマももうそんな年齢か……これで子供たち全てが巣立った訳だ。そりゃ私も年を取る筈だな」
「まだまだお若いですよ。あと百年は魔王の座に就いて頂かないと」
「無理を言うな」
笑いながら答える魔王。
「ところでセバスチャンよ。ゾーマは何処に転移させたのだ?」
「なるべく、人が居ない所に送りました」
「そうだな。いい判断だ。人間は魔族の事を敵対してるからな。
下手に関わって勇者とかが出てきたらゾーマでは、まだまだ厳しいだろう」
「はい。その通りかと」
「それで?何処に転移させたのだ?
南の島のママカイか?それとも北のホッカイか辺りか?」
「いえ、この大陸の真ん中にある【死の森】です」
「死の森!? いやいや、セバスチャンよ、いくらなんでも死の森は厳し過ぎるだろ。あそこで生きて行くのは勇者と戦う方がいくらかマシではないか?」
「可愛い子には、旅をさせろでございます旦那様」
「……セバスチャン」
「私欲を混ぜるのは、よくございませんのは承知してますが、私めは是非次代の魔王はゾーマ坊っちゃんになって頂きたく思ってますので」
「……ゾーマよ。頑張るのだぞ」
何処か遠い目をした魔王の呟きは、嬉しそうな顔をしたセバスチャンにしか聞こえなかった。